生きてて良かった!- 茶 葉 tea’s -

〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

母の愛は無償の愛というが、子供が母を無条件に好きだと思う気持ちを忘れるな!

こんにちは「チャバティ64」です。

 

仕事はお茶の販売をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

よろしくお願いします。

 

すっかり秋めいてきましたが、まだまだ暑い日がありますね。

今日は連続小説を一日だけお休みして【今週のお題】に食いつきました。 

読んでくださっている数名の愛すべき読者の皆さま申し訳ありません。

本日は「紅葉とおふくろのわがまま(母の愛は無償の愛と言うが、子供が母を無条件に好きだと思う気持ちを忘れるな!)」というショートストーリーをお送りします。

過去ブログを引用しながら面白おかしく泣けるものに仕上がっていたらいいんですが、なかなか難しいですね。

 

それでは始まりです。

 

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(おかあちゃん、今夜は肉が食べたい)

 

 

紅葉限定ショートストーリー 「紅葉とおふくろのわがまま」

 

ボクは、おふくろが好きだ。

小さい頃から「おかあちゃん」と呼んでいる。

10月が誕生日で毎年プレゼントは欠かさない。

いつから好きかはわからない。

 

口喧嘩をしたことは何度もある。

叩かれたことも、怒られたこともたくさんある。

しかし、不思議とキライになったことは一度もない。

 

そんな、おふくろが15年ほど前の誕生日の日に定年退社した。

16歳から続けた針子さんの仕事を務めあげた。

ボクはとても立派だと思った。

社長さんの計らいで、本来の定年より5年多くミシンを踏ませてもらった。

おふくろは、そのことをとても感謝していた。

 

ボクは「記念になれば」と、当日会社を休み、労をねぎらおうと思った。

会社から花束をもらい、帰ってきたおふくろを待ち伏せした。

 

「なんや、あんた来とったんか?」

不躾におふくろの先制パンチが飛んだ。

 

「今日定年で仕事終わったんやろ、記念にどっか行けへんか?」

ボクは言った。

 

「そうやなぁ」

おふくろは、考えていた。

 

「行きたいとこあらへんか?」

「欲しいものとかあらへんのか?」

ボクは矢継ぎばやに言った。

 

「ん~、いざそう言われると思いつかんもんやなぁ」

 

「そうや!もみじの苗が欲しい!」

おふくろは目を輝かせた。

 

定年後に土いじりは良いかもしれない。

ボクたちが、小さい頃から「オヤジとオフクロを兼任した」おかあちゃんには、ぜひとも長生きしてもらいたい。

健康的で尚且つ、種類もあって飽きない趣味はいいと思う。

愛でる楽しみもあるし、それほど高額でもないからちょこちょこ買ってあげることも出来るだろう。

 

「ほんなら早速、買いに行こか?」

「着替えてこやぁ」

ボクはうれしくなっていた。

 

すると、おふくろは難しい顔をして言った。

「なんで、もみじの苗を買わなあかんのや?」

「山で取ってこやええやろ?」

 

ボクはまさかの返答に驚いた。

「え~っ、野生のを取ってくんの?」

 

おふくろは続けた。

「ほんなもん、あたりまえやろ」

「買わんでもええ、取りに行った方が記念になるやろ?」

「欲しいもんと、行きたいとこが決ったわ」

 

ボクは「なるほど」と丸めこまれ、取りに行くことにした。

少し離れた、友人の山に入らせてもらい2人で探した。

車でふもとまで行き、歩いて入った。

小学生の時に「クワガタ」を探した以来だ。

 

すぐに見つかると思ったが、これがなかなか見つからない。

寒い地域なので10月でも、もみじは紅く色づき始めていた。

見て回るにはいいのだが、肝心の苗が見つからない。

この日は暗くなったので捜索は終了した。

 

ボクは、ちょうど金曜日だったので今夜は泊っていくことにした。

 

その夜、久しぶりにおふくろと話し込んだ。

お酒は飲めないので、お茶を片手に話をした。

うれし恥ずかし昔話が咲いたころ、10月だったこともあり、小学生の頃の「運動会」の話になった。

(おふくろの誕生日は10月10日です)

忘れもしない「おふくろが一度だけ来てくれた運動会」の話だった。

 

ボクは「運動会」が、あまり好きではありませんでした。

足もさほど速くなく、何が取り柄と言うこともありません。

見てくれる人も褒めてくれる人も来ません。

ボクにとってはお昼に「お弁当」を、グランド隅にシートを引いて、家族で丸くなって楽しそうに食べているのを横目で見ながら、友達と一緒に教室で食べるという行事だったからです。

 

運動会の日は給食がありません。

お弁当をもっているボクは、まだ行事の特別感がありましたが、菓子パンや総菜のおいなりさんを持っている友達もいました。

いま思っても、家庭の事情は様々で、皆が参加できるわけではないので仕方ないことなんですが、小学生ながら何ともいえない寂しさ(格差)を感じてしまうのです。

 

そんなことで自分の中では「運動会は憂鬱」な、行事として定着化されつつあったのですが...

忘れもしない小学校3年生の時の「運動会」です。

当日朝に「おかあちゃん」が、お弁当と水筒を持たせてくれました。

 

かあちゃんは「頑張るんだよ、見とるでね」

そう言いました。

「一生懸命走るよ!」ボクはそう言いました。

その年、ボクはリレーの選手に選ばれていました。

 

運動会が始まりました。

「玉入れ」「綱引き」「徒競走」と進みます。

さて、お昼になりました。

 

先生に連れられ、みんなで教室に行きました。

ここ3年間メンバーは、ほぼ決まっています。

みんなで楽しく食べていたつもりでした。

しかし、今年は少し違います。

 

午後に学級対抗リレーが控えていたからです。

足が特別速いわけではなかったのですが、なぜかメンバーに入っていたんです。 

「バトンを落としたらどうしよう」

「抜かれちゃったらどうしよう」

 

不安がいっぱいです。

 

午後の競技に入りました。

ボクはリレーのことが頭から離れません。

そして、その時間はやってきました。

 

リレーは最終競技なので、メンバーは入場門に集合してグランドを一周行進します。

なんだかお披露目のようで誇らしいです。

そんなときに目に飛び込ん来たのです。

 

「ガンバレ~!」

大きな声で、さけびながら手を振っています。

「まさか?」

ボクは目をこすりました。

間違いなく「おかあちゃん」でした。

 

ねずみ色の作業服を着て、満面の笑顔で手を振っています。

ボクは「うれしくて、うれしくて、うれしくて!」たまらない気持ちになりました。

入場行進中なのに両手で大きく振りかえしました。

「絶対、カッコイイとこを見せなきゃ!」

 

そしてリレーが始まりました。

何かが乗り移ったかのごとく走りました。

いま思い返しても、あれほど速く走れたことはありません。

 

コーナーで一瞬「おかあちゃん」が見えました。

「いけ~!」声が聞えました。

ボクは精一杯走り、一人抜くことが出来ました。

 

すぐにおかあちゃんのところへ行きました。

「お仕事は?」ボクは言いました。

 

「今日はリレーに出るって聞いてたでな」

「間に合うと思って抜けさせてもらったんやよ」

「カッコよかったなぁ」

 

「来れて、よかったわぁ」

 

そう言うとおかあちゃんは、しゃがみこみ「ギュッ」と、両手で抱きしめてくれました。

友達もいたので少し恥ずかしかったけど、それよりも「うれしくて、うれしくて、うれしくて!」ボクは泣いてしまいました。

 

生まれて初めてのうれし泣きです。

 

「何を泣いとんのや、この子は」

そう言うと「おかあちゃん」も、涙をこぼしていました。

 

「ごめんなぁ、いつもこれんでなぁ」

「ごめんなぁ、ほんとにごめんなぁ」

 

ボクは思いました。

「リレーに出ればおかあちゃんが見に来てくれる」

それから一生懸命頑張り、卒業まで毎回リレーの選手になりました。

しかし、おかあちゃんが来てくれたのはこの一度だけでした。

それでも、すごくうれしかったのを覚えています。

 

その反動でしょうか?ボクは自分が所帯を持ってから、保育園から高校卒業まで、子供たちの行事という行事はすべて出ました。

子供にイヤがられることもあったかもしれませんが、学業の参加できることは、すべて出ました。

どれほどこだわっていたかと言うと、進行性の悪い細胞の手術を2ヵ月先延ばしにして卒業式に出てから、その翌日に入院したほどです。

バカでしょ?

「入学式」「授業参観」「発表会」「遠足」「進路相談」「卒業式」など、いい思い出ばかりですが、やはり子供達と、かみさんと一緒にグランドの隅にシートを敷いて食べた「運動会のおにぎりの味」は、やはり格別でした。

 

本当にウマかった!

あこがれてたんだ!

こういう運動会に!

かなえてくれてありがとう!

みんな、みんな、ありがとう!

 

そんな話を永延と、 

家を出てからのことも含めて夜通ししました。

おふくろは時々泣きながら聞いていました。

 

ボクも涙が溢れました。

不思議と、おかあちゃんの前ではいくつになって恥ずかしくない。

素直に泣けるのはなぜなんでしょう?

 

そして翌日、もみじの苗を探しに行きました。

道端から少し入った所に車を止め、山に入ろうとしたときです。

 

「あっ!あった~!」

見つけました、一枚だけ葉の付いたもみじです。

「おかあちゃんあったよ!やっとあった!」

ボクは言いました。

 

そうしたらおふくろは返しました。

「なんや、そんなとこにあったんか?」

「なんで昨日、気付かへんかったんやろうな?」

「よっしゃ、あと2本見つけたら帰ろ!」

 

「えっ?」

「2本?」

ボクは本数は考えていませんでした。

 

おふくろは言いました。

「1本枯れたら、どないすんにや」

「記念になれへんがな」

「3本あれば安心やろ、はよ探せ!」

 

「まいりました」

ボクは、このあと探しまくって4本見つけました。

今でもこのもみじは、庭にあって大きくなっています。

4本とも...

 

かあちゃん最高!

 

今日のお話はここまでです。

 

あなたの今日がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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