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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

連続小説ドライバー29 第三章「無題 ある絵描きの死」第十一話 

こんにちは、チャバティ64です。

仕事はお茶の販売をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

よろしくお願いします。

 

本日も連続小説の続きをお届けします。

 

彼は病院のベッドで新たな事実を知る。

二人の愛の結晶は!

そして、彼の口から衝撃の事実が語られる。

さあ、いよいよラストスパートに入ります。

 

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(感謝、かんしゃ、カンシャです) 

 

連続小説ドライバー3 「無題(ある絵描きの死)」

昔話は本当の話の連続小説 第十一話

 

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)

 

行く道は涙に濡れ、

行く道は嘆きにあふれ、

行く道は悲しみの数だけ続く

・・・「DRIVER」

 

《本編》

 

「気持ちが楽になりました」

ミホは目を閉じた。

 

「世界にロンシャンは、この日本の店を合わせて17店あります」

「どの店にも、あなたのさくらの絵がミュンヒルの作品として飾ってあります」

「あなたが持って来てくれた絵も、すでに飾られていますよ」

「昨日、額を割ってしまった絵はバンビーノとの約束ですから、退院したらお渡ししますね」

そう言うと、ミホはやさしく微笑んだ。

 

彼は言った。

「あの絵は、フランスのお店に飾ってあるものを持ってきたと聞いたけどいいのかい?」

 

ミホは言った。

「それは大丈夫です」

「フランスのお店用はロンシャンの自宅から持ってきてもらいます」

「家に遊びに行った時、3枚飾ってあるのを見ました」

「フ.フ.フッ」

 

「それにあの絵にはバンビーノのサインまで入っているんですもの」

「あなたが持つのが一番ふさわしいでしょう」

 

ミホは嬉しそうに笑った。

 

彼は言った。

「よくわかったよ、ありがとう、そうだったんだね」

「ボクは名前や、たくさんのお金なんてどうでもいいんだ」

「ボクが描きたかった絵を、みんなが褒めてくれればそれでいいんだ」

「そして、いつも褒めてくれたのがバンビーノだったんだ」

「太陽のような笑顔でね」

 

そして、彼はどうしても、もうひとつ聞きたいことがあった。 

 

「ミホさん、もっ、も、もう一つ聞いてもいいかな?」

 

ミホは小さくうなずいた。

「その、あの、ボクたちの子供ってロンシャンさんに聞いたけど...」 

 

 ミホは言った。

「はい、男の子で、先月10歳になりました」

「名前はハルトシと言います」

「名付け親はもちろんバンビーノです」

 

「やっぱり、そうか...」

彼は、絵の裏にあったサインの名前を思い出していた。

 

ミホは続けた。

「バンビーノは、どうしても漢字の名をつけたかったんです」

「そして、私に教えて欲しいと相談して来ました」

 

「名前はすぐに決まりました」

「春が大好きだったバンビーノらしい名前です」

「あなたも喜んでくれると言っていました」

 

「そして漢字は、あなたの名前の治宗(マサムネ)から『治』の一文字を取りました」

「これは『ハル』と読めますね」

「それから私の恵歩(ミホ)の『恵』という字をつけると言い出し、困ったのですが最後には根負けしました」 

「これは人名字では『ト』と読めます」

「そして最後の『シ』という字はなかなか決まらなくて悩んだあげく『須』という字が気に入りつけました。

部首の「さんづくり」が「さんずい」などと違って同じ方向を向き、三人で芝生の上を寝そべるような字だと喜んでいました。

ミホは嬉しそうに言った。

 

「ステキな名前だね、さすがバンビーノだ」

「ミホさんも本当にありがとう、バンビーノの喜ぶ顔が目に浮かんだよ」

そういうと彼は目を閉じた。

 

「ゴホ、ゴホッ」

少しセキが出始めた。

 

聞きたいことはまだまだあるが、ミホの気遣いで明日にすることになった。

 

翌日、ミホはロンシャンと一緒に病室を訪れた。

窓からはカーテン越しに、やわらかな光がさしていた。

 

「やぁ、マサムネ、調子はどうだい?」

「急に倒れるから驚いたよ」

「なにからなにまで老人を驚かせるなぁ」

「君も、バンビーノも!」

 

ロンシャンは、手に持っていた四角い包みを差し出した。

「ほら、マサムネ、お見舞いだ、何よりも元気が出るぞ!」

 

そう言われ、彼は両手で受け取り包装をはがした。

すると中からあの絵が出てきた。

 

「ロンシャンさんこれは...」

 

ロンシャンは言った。

「昨日、日本で言う大工を呼んで作ってもらったんだ」

「うちの店を作ってくれた職人さんだよ」

「額から出したままじゃいけないと思ってね」

 

「マサムネ、キミは額に合わせてキャンバスを選び、絵を描いただろう?」

「これは違うんだ、絵に合わせて額を作ったんだ」

「裏側も見てくれよ」

 

彼は額を裏返した。

なんと!裏面の一部がガラス張りになっていた。

もちろん手紙とサインの部分であった。

 

「最高です、ロンシャンさん」

「これじゃ、どっち向きに飾っていいのか分からないです」

「本当にありがとうございます」

 

彼は裏面を凝視しながら涙ぐんだ。

 

ロンシャンは言った。

「マサムネ、ミホから色々聞いただろ?」

「バンビーノはキミとの出会いに感謝していた」

「後悔なんて、どこにもなかったんだ」

 

「これからもいい作品を描き続けてくれ」

「出来た絵は、私がすべて買うよ」

 

「上からサインはしないがね」

ロンシャンがサインを描く真似をして、おどけて見せた。

 

「ハッハッハッハ...」病室が笑いに包まれた。

 

「ちなみにマサムネ、私はキミが持ってきてくれたあの絵を、いくらで買えばいいんだい?」

「もう店に飾ってしまって返せないがね」

ロンシャンは両手を広げ、にやけた顔で首を振りながら言った。

 

彼は言った。

「もちろん差し上げます」

 

「本当に、お世話になってしまいました」

「ロンシャンさんが、ボクを探してくれなければ何もわからなかった」

「最後の置手紙も受け取ることが出来ませんでした」

「そのお礼になれば、うれしいです」

 

ロンシャンは言った。

「マサムネ、キミは知らないだろうが、あの絵を買おうとすれば500万フランはするんだ」

「タダで受け取るなんて出来ないよ」

 

「500万フラン?本当ですか?」

彼は驚いた。

「そうなんですね、それはよかったです」

「バンビーノに褒めてもらえるなぁ」

「青いスカートも、たくさん買ってあげられる」

 

彼は明るくハッキリとした口調で言った。

 

「実はボクはもうすぐ死ぬんです」

 

 

今日のお話はここまでです。

このお話は明日に続きます。

 

あなたの今日がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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