スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」第十一話「余命(アイドル)」
こんにちは、チャバティ64です。
今日は静岡に戻り商品の補充と来週の準備です。
なんだか体の節々が痛いです。
革靴で歩きすぎたのかな?
体重が…
仕事はいい香りのするお茶の販売員をしています。
BASEの「お茶の愛葉園」(あいばえん)
というショップを趣味で運営しています。
ぜひ、お立ち寄りくださいね。
さて、連続小説ドライバー第三章も残すところ、あと2回(13話完結)となりました。
彼の告白にロンシャン、ミホが打った手は?
第十一話スタートです。
(エンディングテーマが聞えてきました)
スピンオフな連続小説
第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」
第十一話「余命(アイドル)」
(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙に濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く
・・・「DRIVER」
《本編》
「実はボク、もうすぐ死ぬんです」
「肺に悪い腫瘍があって、数か月前に『あと半年』という余命宣告をされました」
「それで、体力のあるうちに最後の一枚を描こうと外へ出たんです」
「思い出のある『さくらの花びらが風に舞う風景』です」
「そこでロンシャンさんに出会い、この奇跡をもらったんです」
「感謝しても、感謝しきれません」
「きっとバンビーノが引き合わせてくれたんですね」
嬉しそうに話す彼を見て、ロンシャンもミホも言葉を失った。
「そうだ!もし許されるのなら息子に『ハルトシ』に、少しお金をいただけませんか?」
「息子なんておこがましいですが、ボクには残してあげられるものが何もありません」
「いま、どこにいるのかわかりませんが、孤児院なら寄付を、養子なら、その家へ少しでいいですから、渡していただけませんか?」
ロンシャンは言った。
「わかったよ、マサムネ」
「約束する、必ずだ!!」
彼は言った。
「ありがとうございます!」
「それから...」
「ボクが死んだら、この絵も一緒に渡して下さい」
「後は、飾っても換金してもかまいません」
「自由にさせてあげてください」
彼は満足そうな顔をした。
ロンシャンはミホと顔を見合わせた。
ロンシャンは目で語った。
そしてミホは小さく頷き、病室を出て行った。
ロンシャンは言った。
「マサムネ、よく話してくれたね」
「疲れただろう」
「少し横になるといい」
そういうと病室から出て行った。
ロンシャンは、廊下のベンチシートに座り、頭を抱えた。
「なんてことだ、やっと出会えたのに...」
「彼がそんな病気だったなんて、残酷過ぎるじゃないか」
「あぁ、神よ、私はあなたのことが嫌いになりそうだ....」
ロンシャンは涙が止まらなかった。
それから一時間後、ミホがやってきた。
「早かったな、ミホ」
「私は少々疲れてしまったようだ」
「あとはまかせていいかな?」
ロンシャンは言った。
「わかりました」
ミホはうなずいた。
「ハル、よく来てくれたな、待ってたよ」
ロンシャンは、ミホが連れてきた子供に手招きした。
「うん、おじいちゃん!」
そう言うと、ロンシャンの首に飛びついた。
ミホは「ハルトシ」を連れに行っていたのだ。
「ハル」は、世界中の高級レストラン「ロンシャン」の従業員が知るアイドルだ。
小さい頃からバンビーノに連れられ、控室で遊んでいた。
代わる代わる来る研修生たちに可愛がってもらっていたのだ。
だから、人見知りもなく、とてもひとなつこい。
「ミホ、一緒に連れてきていてよかったね」
ロンシャンが言った。
「はい、本当にそう思います」
「まさか、こんなことになるなんて思いもしませんでしたから」
「やっぱりバンビーノが、どこかから手を差し伸べてるんですよ」
ミホは嬉しそうに言った。
「そうだな、本当にそう思うよ」
「マサムネは、ハルを見てまた倒れるんじゃないか?」
ロンシャンが言った。
「ここは病院ですから大丈夫ですよ」
笑いながらミホが返した。
「さぁ、ハル、行こうか?」
ミホはしゃがんで、ハルトシの顔をなで立ちあがった。
「ミホママ、ちょっと待って!」
ハルトシは「ミホ」のことを小さい頃から「ミホママ」と呼んでいた。
バンビーノは、彼と別れた後、住むところが無く、ミホのアパートに泊めてもらっていた。
そして、バンビーノが妊婦であることがわかると、ミホは同居の提案を彼女にしたのだ。
それからは、ずっと3人で暮らして来た。
だから「ハル」にはママが2人いる。
ハルトシは胸に両手を当て、大きく深呼吸した。
そして、ミホと手をつなぎ直し、病室のドアをノックした。
「コン、コン、コン、コン」
「ガチャ」ドアを開けた。
マサムネは寝ているようだ。
ハルトシは、ここに来るまでにミホから聞かされていた。
自分の本当の父親であると。
そしてもうすぐ死んでしまうことを。
実感がなかったから悲しくなかったが、子供ながら複雑な気持ちだった。
どうやって接していいのかわからない。
しかし、バンビーノと暮らした10年間で、もの心ついたときから「父の偉大さ」「素晴らしさ」を、毎日のように聞かされていた。
「だから、ずっと会いたかった」
それが答えのすべてだった。
今日のお話はここまでです。
あなたの日々がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。