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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」第九話「秘密(サイン)」

こんにちは、チャバティ64です。

 

朝晩、少々冷え込みますね。

みなさん、静岡県川根というところに「みずめのさくら」という桜の木があるのをご存知でしょうか?

茶畑の中に一本だけある、それはそれは大きなさくらなんです。

ボクは週刊少年ジャンプで連載していた「花の慶次」という漫画が大好きなんですが、その作品に出てくる一本桜のモデルではないかと思うほど見事なさくらです。

 

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ソメイヨシノではないので少し早く咲くところもいいんですよ。

ぜひ一度ご覧ください。

 

仕事はお茶の販売をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

 

よろしくお願いします。

 

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(右下に人がいます、木の大きさがわかりますか?) 

 

スピンオフな連続小説 

第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」

第九話「秘密(サイン)

 

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)

 

行く道は涙に濡れ、

行く道は嘆きにあふれ、

行く道は悲しみの数だけ続く

・・・「DRIVER」

 

《本編》

 

「あなたは...」

 

ミホは答えた。

「私は、恵歩(ミホ)と言います」

「開店前では大変失礼いたしました」

「バンビーノとは古くからの友達です」

 

「そうだったんだ...」彼はつぶやいた。

 

彼は、バンビーノに友達がいたことすら知らなかった。

【ボクはいったい彼女の何を知っていたんだろう?】

そう思うと、心の底から自分がなさけなくなった。 

 

「ミホさん、ボクは知らないことだらけだ」

「バンビーノと別れた後のことは,知らなくても仕方がない」

「ボクが女々しく思い続けていただけだから」

 

「しかし、一緒に暮らしていたときのことも知らないことだらけなんだ」

「教えてくれないか?」

「キミが知るバンビーノのことを」

彼はベッドから体を起こし、ミホに懇願した。

 

ミホは、さっきとは違い厳しい表情で言った。

「わかりました、お教えします」

「しかし、お教えする前にひとつだけ訂正させてください」

 

「あなたは勘違いしている」

 

「あなたは絵に夢中で、彼女のことをないがしろにした」

「知らないのではなく、知ろうとしなかった」

「そう、思っていますよね!」

 

彼は、静かにうなずいた。

 

「それは違います」

「彼女が教えなかったんです」

「バンビーノは、彼の絵の邪魔になるくらいなら『私は消えた方がいい』とまで言っていました」

「彼女のすべてが、あなたの絵に注がれていたのです」

 

「彼女は『信じてる、私が正しかったことを彼が証明してくれるの』と、口癖のように言っていました」

 

彼は、自分も知っているバンビーノの口癖と同じことを言ったミホに、真の友情を見た気がした。

 

ミホは続けた。

「あなたの友人だった画家で画商のミュンヒルが、あなたがフランスにいるころからずっと、あなたの絵に自分の画家名を入れて売っていたことを知っていましたか?」

「ミュンヒルは、すくなくとも画商ですから、自分で描いた絵が、あなたの絵に遠く及ばないことを感じ、あなたから絵を買い上げていたんです」

 

「彼の家は、3代続く画商です」

「あなたに見つからない販売ルートがあったのでしょう」

「しかし絵が高く評価され、メディアに出ない幻の画家として有名になってしまった」

「そして、作品がバンビーノの目にも、ふれてしまったんです」

 

「それを突き止め、作品を見たバンビーノは、愕然としました」

「そして、ひどく怒っていました」

「私は、裁判所に訴えてやればいいと言いました」

 

「そうしたら、違うんです」

 

「あなたの絵の上に、サインをしたことをひどく怒っていたんです」

「あなたの絵を汚した!」

「どうして裏側にしてくれなかったのかって」

 

「私は、そんなバンビーノに唖然としましたけどね(笑)」

 

「しかしそのあとバンビーノから、もしあなたがここにいても、きっとそんなことは気にしないから、内緒にしておいてほしいと言われました」

 

「ロンシャンがミュンヒルの絵を買うことは、あなたの絵が店に飾られることです」

「なによりも、バンビーノが喜ぶことです」

「だから、私はロンシャンにも内緒にしていました」

 

「しかし、あなたは現れた」

「もう、彼女と私の2人だけの秘密にする必要もありません」

「とても気持ちが楽になりました」

ミホは目を閉じた。

 

 

「世界にロンシャンは、この日本の店を合わせて17店あります」

「どの店にも、あなたのさくらの絵がミュンヒルの作品として飾ってあります」

「あなたが持って来てくれた絵も、すでに飾られていますよ(笑)」

 

「昨日、額を割ってしまった絵はバンビーノとの約束ですから、退院したらお渡ししますね」

そう言うと、ミホはやさしく微笑んだ。

 

彼は言った。

「あの絵は、フランスのお店に飾ってあるものを持ってきたと聞いたけどいいのかい?」

 

ミホは言った。

「それは大丈夫です」

「フランスのお店用はロンシャンの自宅から持ってきてもらいます」

「家に遊びに行った時、3枚飾ってあるのを見ました」

「フフフッ」

 

「それにあの絵にはバンビーノのサインまで入っているんですもの」

「あなたが持つのが一番ふさわしいでしょう」

 

ミホは嬉しそうに笑った。

 

彼は言った。

「よくわかったよ、ありがとう、そうだったんだね」

「ボクは名前や、たくさんのお金なんてどうでもいいんだ」

「ボクが描きたかった絵を、みんなが褒めてくれればそれでいいんだ」

 

「そして、いつも褒めてくれたのがバンビーノだったんだ」

「太陽のような笑顔でね」

 

そして、彼はどうしても、もうひとつ聞きたいことがあった。 

 

「ミホさん、もっ、も、もう一つ聞いてもいいかな?」

 

 

 

今日のお話はここまでです。

 

あなたの今日がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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