スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」第二話「彼女(バンビーノ)」
こんにちは、チャバティ64です。
案の定、閲覧数が減りました…orz
しかし、応援して下さる方もいるのです。
大変心強いことです。
そんな読者さんが大好きです。
さて、今日も連続小説をお送りします。
この物語は春らしく「さくら」と共にお送りします。
平和な一日に突然現れた社長。
何を話はじめることやら。
第二話はフランスへ飛びます。
スピンオフな連続小説
第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」
第二話「彼女(バンビーノ)」
(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙に濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く
・・・「DRIVER」
《本編》
「その絵には少し思い出があるんだよ……」
それはまだ「1964年の東京オリンピック」が、終わったばかりのころ、フランスにある小さな木造の借家で「夢中で絵を描いている」日本人の絵描きがいた。
その絵描き(彼)は「絵を描くことが大好き」だった。
理由はよくある話で、小さい頃に描いた絵が上手だと褒められた記憶が鮮明にあるからだ。
いまも、誰かに褒められたくて描いていることは自分でも気付いている。
しかし、褒めてくれるのは一緒に暮らしている彼女だけだった。
彼女の名は「バンビーノ」少しふっくらした金髪で色白のフランス人だ。
彼が、フランスに留学したばかりの頃、デッサンの勉強中に知り合った女性だった。
日本語を勉強していて、とても会話が上手だ。
仕事は看護師で、厳格な家庭で育ち、家族には病院の看護師寮に住んでいることになっている。
彼は、太陽のように明るく笑う彼女が大好きだった。
いつも一緒にいられるわけではないが、彼女はいつも彼に置手紙を書いてくれた。
その手紙は必ず、日本の「さくら」をイメージさせる花模様の便せんに書かれていた。
彼女の心のこもった、その手紙を読むたび彼は、いとおしい気持ちになった。
彼は、その気持ちをキャンバスにぶつけていた。
激しいほどの愛情を精一杯ぶつけた。
朝も夜も寝食も忘れて夢中になった。
そして季節も忘れたころ、一枚の絵が描けた。
それは「さくらの花びらが風に舞う風景」だった。
「やぁ、ステキな絵だね!」
窓から声をかけてきたのは近くに住む「ミュンヒル」だった。
ミュンヒルは、近所の画廊の店主で、いつも絵を買ってもらっている。
「やぁ、ミュンヒル、久しぶりにいい絵が描けたと思うんだ!」
「奮発してくれないか?」
「バンビーノと、最近出来た人気のレストランに行きたいんだ」
「出来れば、青いスカートもプレゼントしたいんだよ」
ミュンヒルは下を向き、上を向き、腕組みして言った。
「わかったよ、1500フランでどうだい?」
「そんなに?! いいのかい?」
「ああ、いいとも」
「親友の頼みだ!」
「ありがとう、ミュンヒル!」
「いつものようにサインは入れなくていいね」
「ああ、そうしてくれ」
「じゃあ、明日引き取りに来るよ」
「しっかり仕上げておいてくれよ」
「わかったよミュンヒル、ありがとう!」
彼は上機嫌だった。
「久しぶりに、二人で食事に行けるぞ」
「1500フランあれば、スカートも買ってあげられる」
明後日はバンビーノの誕生日だった。
翌日、精一杯のおめかしをして二人で食事に出かけた。
しかし、お金が足りなくて「青いスカート」は買えなかった。
「バンビーノ、ごめん、プレゼントをあげられないよ」
彼は下を向き、首を横に振った。
バンビーノは言った。
「そうね、罰として『さくらの絵』を私にも一枚描いて」
「お部屋に飾るの」
「そうしたら、いつも春よ」
「一年中、気持ちのいい季節だわ!」
「私、あなたの絵が大好きなの!」
「私のためだけに描いて!」
彼は、照れ臭かったが「次の一枚」が、出来たらあげることを約束した。
彼は程なく「小さなさくらの絵」を書き上げた。
小さい額に入れ、リボンを掛けてバンビーノに渡した。
彼女は「どんなプレゼントよりもうれしい!」と言って抱きしめてくれた。
お金はないが、彼はとても幸せだった。
そんな彼のことが、彼女は大好きだった。
それから、絵描きは「さくらの絵」を描いた。
なぜかって?
それはミュンヒルが高く買ってくれるからだ。
来る日も来る日も、
「さくらの花びらが風に舞う風景」を描いた。
「街に」「山に」「海に」風に舞う花びらはどれも美しかった。
絵描きは、彼女にもミュンヒルにも褒められる存在となった。
今日のお話はここまでです。
あなたの日々がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。