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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」第十二話「無題(マサムネ・ヨサノ)」

こんにちは、チャバティ64です。

 

暖かい日になりました。

これなら明日頃、さくらが満開になりそうです。

なんだか寂しい気もしますが、来年また楽しませてくれます。

自然に感謝ですね。

 

仕事はさくらに負けない、いい香りのするお茶の販売員をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

 

さて連続小説は、残すところあと一回です。

時を経て、現代に戻ってきます。

 

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(さようなら、マサムネ) 

 

 

スピンオフな連続小説 

第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」

第十二話「無題(マサムネ・ヨサノ)」

 

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)

 

行く道は涙に濡れ、

行く道は嘆きにあふれ、

行く道は悲しみの数だけ続く

・・・「DRIVER」

 

《本編》

 

「だから、ずっと会いたかった」 

それが答えのすべてだった。

 

ハルは子供らしく、寝ている彼の布団の上にダイブした。

びっくりして飛び起きたマサムネに、ハルトシはこう言った。

 

「はやく起きてよぅ!」

「おじさんがボクのパパなんでしょ?」

 

「ママからずっと聞いてたんだ!毎日毎日」

 

「ママはいつもね、パパのことが大好きだって言ってた」

「パパと出会えて幸せだって言ってた」

「ママはね、パパのことを話すとき、一番笑ってたんだ!」 

 

「写真が一枚も無かったから、いつも想像してたんだよ」

 

「本当に会いたかったんだよ、パパ」 

「会いたかった!」

 

彼は困惑していた。

突然現れた子供が、自分にしがみつきながら「パパ」と呼んでいる。

いまさらだが、自分には10年分の思い出が何もないことに気付いた。

 

時間の流れを素直に受け止められなかった。

しかし、それはほんの少しの間だったようだ。

 

初めて見た我が子は、まさしく自分の子供だった。

目や髪の色は黒く、顔立ちもすごく似ていた。

そして、見つめる目もとはバンビーノにそっくりだ。

 

すぐに「ギュッ」と、抱きしめることが出来た。

 

「あぁ、ハルトシ」

「ごめんよ、ずっと会えなくて、ごめんよ」

マサムネは何度も何度も、あやまりながら抱きしめた。

 

それを見ていたミホは、小さくうなずきながら泣いていた。

廊下で、話し声を聞いていたロンシャンも肩を震わせ泣いた。

 

ミホは「会わせていいものか」と、さっきまで思っていた。 

しかし今は「本当に連れてきて良かった」と思った。

 

それから数日で、彼は退院した。

退院するとき「もう一枚、絵が描けそうだ」と笑った。

 

しかし、それから絵を描き上げることはなかった...

 

今も彼の魂は、木造アパートの一階で絵を描いている。

そう思えるほど、彼の「描きかけのデッサン画」は見事だった。

 

そして...

バンビーノが信じていたことは正しかった。

彼の絵は、世界中で絶賛され名前を残す画家となった。

 

今頃バンビーノに色んな絵を見せているに違いない。 

きっと「ステキな絵ね」と、微笑んでくれていることだろう。

 

そして、後日行われた彼の葬儀で飾られたのは...

彼の代表作「無題」という名の絵だった... 

 

f:id:tyabatea:20181111061728j:plain (やぁ、バンビーノ待たせたね)

 

 

すべてを話し終わった社長は、静かに目を開けみんなに言った。

 

「彼の死後、ミュンヒルが自白し、不運の名画家として名高い「マサムネ・ヨサノ」が生まれたんだ」

「これはマサムネファンなら皆が知る、有名な話だよ」

 

「唯一、マサムネのネームの入ったあの「さくらの絵」は、もちろん市場には出ないが、もし出たとしたら800万ユーロはくだらないだろうね」

 

「どうかな、たまには、話もいいもんだろぅ?」

 

「え~っ」

「それが鈴木さんすかぁ~!」

「いや、ありえないっしょ!」

 

「だって、そもそも苗字がヨサノじゃないっすか」

「さっき、その絵を外しましたけど裏側はガラスになってなかったすよ」

川崎は驚きを超越し興奮しながら言った。

 

「本当の話なんですか?社長」

「すごい話ですけどねぇ」

本多は冷静に言った。

 

「うっそだよねぇ、さすがにぃ」

「鈴木さんがハーフって、ハハハッ」

山葉は笑いながら言った。

 

「ガチャ」

事務所の扉が開いた。

 

「鈴木さぁ~ん」

川崎が叫けび、みんなが一斉に鈴木を見た。

鈴木はタイムリーなことに絵と思われる包を持っていた。

 

「なんだ川崎、変な声出して?」

「みんなまだいたのか?」

「社長まで?」

「めずらしいな!」

「なんの話してたの?」

 

鈴木は梱包を解き、みんなにそれを見せた。

「社長、ちょうどよかった、これ飾っていい?」

 

それを見た瞬間、皆がなぜか「ゾクッ」とした。

うす茶色い布のキャンバスに、線というよりは、まるで書道のように太く黒いが、少しかすれた感じで描かれている、下書きのような絵だった。

 

「いいぞ、好きに飾れよ」

社長が言った。

 

「そんじゃ、この辺に飾ろっかな」

 鈴木はゴキゲンだった。

 

よく見ると、鈴木の目は少し茶色く見えた。

髪も黒ではなく茶に近い。

言われてみれば、たしかに色も白い。

 

しかし、ホントなら「鈴木」という苗字もおかしい。

亡くなった両親の話を本人には聞きにくい。

 

本多は席を外し、車庫に行った。

そして「TS葬儀社の大東部長」の携帯に電話した。

(大東部長 ドライバー第二章 参照)

 

元勤務していたのなら何か知っているはずだ。

しかも、2人は仲がよさそうだった。

 

「プルルル、プ、もしもし大東です」

さすがの部長、2コールで出た。

 

「もしもし、ライラックの本多です」

「ご無沙汰してます」

 

「お久しぶりですね本多さん、お元気でしたか?」

相変わらず、丁寧でやさしい声だ。

 

「部長、ちょっとお伺いしたいことがあって...」

「プライベートなことなんですけど...」

本多が小声で言った。

 

「なんですか?私でわかることでしたら」

大東が返した。

 

「実は鈴木さんのことなんですけど」

「TSさんに勤務していたとか聞いたんですけど...」

 

「そうですね、実務としては私と入れ違いぐらいでしたね」

「私は、まだ新入社員に毛が生えた程度でしたが...」

「本多さんが、ご存知かどうかわかりませんが、TSはこの業界では若い会社で、まだ創業30年過ぎたくらいなんです」

「会食の料理がおいしく、接客がいいことで評判になり、急速に大きくなった会社です」

 

「しかし誤解してますね、本多さん」 

「退社はしてないですよ、鈴木さん」

 

「えっ、どういうことですか?」

本多は驚いた!

 

 

今日のお話はここまでです。

 

あなたの日々がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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