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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」第五話「名前(マサムネ)」

 

こんにちは、チャバティ64です。

 

日本にも紅茶の木があって大切に育てられていることを知っていますか?

そんな紅茶を「和牛」にちなんで「和紅茶」なんて呼んでいます。

甘味が強く、あきらかに海外のモノとは香りもお味も違います。

 

お茶屋が言うんですから間違いありません。

おいしいかどうかはご自分のご判断にお任せします。

戻れなくなりますよ、いつもの紅茶に(笑)

 

仕事はいい香りのするお茶の販売員をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

 

さて、本日は第五話です。

伝説のフレンチシェフ、ロンシャンは何を語るのか?

マサムネは果たして書き上げることが出来るのだろうか?

それではお楽しみ下さい。

 

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奇しくも【今週のお題】も「桜舞う季節」ですね。

 

スピンオフな連続小説 

第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」

第五話「名前(マサムネ)」

 

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)

 

行く道は涙に濡れ、

行く道は嘆きにあふれ、

行く道は悲しみの数だけ続く

・・・「DRIVER」

 

《本編》

  

今を支えているのは「バンビーノ」との思い出だけだということが、自分でも痛いほどわかっていたのだった。

 

ロンシャンは続けた。

「それは店に飾る絵としては小さ目で、ノーネームだった」

「しかし、とても美しく素晴らしい作品なんだ」

「ボクは一目で気に入って、店の真ん中の柱に飾ることを彼女に約束したんだ」

「彼女は、喜んでくれたが『一つだけ約束してほしい』と言われてね」

 

「それは『額から絵を取り出さないこと』だったんだ」

 

「絵が痛むからイヤだと言っていたよ」

「彼女にとっても大切な絵なんだね」

「ボクはもちろん『約束を守る』と言ったよ」

 

「それから、ボクはすぐに退院したけど、誰が描いたものかを聞き忘れたから、病院へ行ったが彼女はいなかった」

「絵を受け取った翌日に病院をやめてしまったんだ」

「ボクはそれから、その看護師と、この作品の作者を探したよ」

 

「そうして、よく似た絵を描くのが、ミュンヒル・ロータリーだったわけさ」

「それでボクはミュンヒルのファンになったんだ」 

「おかしな出会いだろ?」

 

「手を止めさせてすまんが、もう少しだけいいかな?」

 

彼はうなずいた。

 

「料理はね、絵に少し似ているんだ」

「キミがたくさん絵を描いたように、ボクもいっぱい料理を作った」

「ボクはシェフだったが、ありがたいことに、ボクが作る料理が少しだけ他よりも愛され『食べたい』という人が増えたんだ」

 

「だから店を増やした」

「しかし、ボクも年をとり、力も衰え味覚もにぶる」

「だから、ボクは引退し、レシピを残すことにしたんだ」

「いまは、かつての仲間、ライバル、生徒達が素晴らしい料理を作ってくれている」

「ボクは『レシピという誰もが鑑賞できる絵』を残せて満足なんだよ」

 

「いまは、店をながめるだけの、ただの老人だがね」

そう言うと、ニッコリ笑い「完成するころにまた来るよ」と後ろ向きに手をふり歩いていった。

 

「わかりました、待っています」

絵描きは「ロンシャン」に誉めてもらえたことが嬉しかった。

お店に飾ってある「さくらの絵」も見てみたいと思った。

 

それから、3日程で仕上がる予定だったが、彼は数日間、体調がすぐれず「さくらの絵」が完成したのは2週間後だった。

 

何となくだが、絵に「名前」を入れようと思った。

名前を入れるのは、これが二回目だ。

迷ったが、裏側に「masamune.yosano」と控えめに入れた。

すると、不思議と涙が出てきたのだ。

 

【なぜだろう?】

彼は絵を見ながら、しばらく泣き続けた。

 

【ロンシャンさん、何度か来てくれたのかな?】

彼は心のなかで「申し訳ない気持ち」と「心変わりしたんじゃないか」という気持ちをぶつけあっていた。

最終的に「約束だから、お店に絵を届けよう」と思った。

 

押し売りみたいでイヤだが「断られたら持って帰ればいい」と開き直った。

実は「絵描き」として、飾ってあると言っていた「さくらの絵」が見たいだけなのかも知れない。

とにかく、今日は体調がいいから「届けるなら今日しかない」と思った。

 

久しぶりに電車に乗った。

二駅過ぎたところにお店があり、お昼過ぎには着いた。

ずいぶんと人通りの少ない静かなところで少し拍子抜けした。

 

【そういえばロンシャンさんは、なぜあんなところを歩いていたのだろう?】

彼は、いまさらだが不思議に思えた。

 

夕暮れ時から始まる、そのお店「ロンシャン」は、まだ閉まっていた。

彼は、誰か来ないか玄関の近くで待っていた。

「ゴホッ、ゴホ」

少しセキが出始めた。

「ゴホッ」

「早く誰かこないかなぁ?」

 

しばらく待っていると、青いスカートを身につけた女性が店の中から出てきた。

 

彼は、すかさず言った。

「すいません、ロンシャンの方ですか?」

女性は、大きな包みを持つ、髭面、長髪を後ろに束ねた中年男に少し驚いたようだった。

「そうですが.... 開店までは、まだお時間がございますが?」

「ご予約のお客様でございますか?」

 

彼は言った。

「ちがうよ、客じゃない」

「見てもらいたい絵があるんだ」

「ロンシャンさんを呼んでくれないか?」

 

女性が言った。

「『絵』ですか?」

「あいにくですが、ロンシャンは引退してから、店に出て接客することもありません」

「ましてや、絵の売り込みに立ち会うとは思えません」

「申し訳ありませんが、お引き取り下さい」

 

そうは言ったが女性は、彼がなぜ、ロンシャンが日本に来ていることを知っているのか不思議に思った。

 

 

今日のお話はここまでです。

あなたの今日がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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