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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」第六話「不安(ギブス)」

こんにちは、チャバティ64です。

 

今日は、天気雨のへんな一日でした。 

静岡の茶処、川根ではさくら祭りが行われていて、SLに乗った方がたくさん来場したようです。

 

 

昔、おふくろが言いました。

「さくらは毎年咲くけど、100回は見られへん」

「それやで、しっかり見んといかんなぁ」

 

日本人はさくらが好きですね。

ボクも大好きです。

 

仕事はいい香りのするお茶の販売員をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

 

よろしくお願いします。

 

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スピンオフな連続小説 

第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」

第六話「不安(ギブス)」

 

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)

 

行く道は涙に濡れ、

行く道は嘆きにあふれ、

行く道は悲しみの数だけ続く

・・・「DRIVER」

 

《本編》

 

そうは言ったが女性は、彼がなぜ、ロンシャンが日本に来ていることを知っているのか不思議に思った。

 

彼は、いつもならあきらめていた。

しかし、今日は折れなかった。

彼は「今日しかない」と思っていたからだ。

 

「ゴホッ」

また少しセキが出た。

 

「それでは、店の中に飾ってある『さくらの絵』を見せて下さい」

「それを見たら帰りますから...」

彼は頭を下げた。

 

【なぜ、さくらの絵のことを?】

女性は困惑した。

 

オープン前の店内に部外者を入れては行けない決まりもある。

しかし、営業時間であっても、予約のない方を店内に入れるわけにもいかない。

 

「少し、お待ちいただけませんか?」

「私では分かりかねますので、チーフに確認してまいります」

 

女性は彼に頭を下げ走っていった。

「ゴホッ」

口に手をあてた。

 

彼は、追い返されても仕方がないと思った。

そして、5分程過ぎた時、人がやって来た。

黒い三つ揃いのスーツに蝶ネクタイの男性だった。

 

「大変お待たして申し訳ありません」

「私、この店のものでスズキと申しますが、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

 

「ヨサノです」

「ヨサノ・マサムネです」

彼はドキドキしながら言った。

 

すると、その男性は左手を胸に当て深々と頭を下げた。

「お待ちしておりました、ヨサノ様」

「ロンシャンがまちかねております」

「こちらへどうぞ」

 

彼は男性の後をついて行った。

店の中に入るとロンシャンが真ん中あたりのテーブルにいて、高級そうなイスに腰掛けていた。

 

「ロンシャンさん、怒ってるだろうな」

彼は少し怯んでいた。

よく見ると、ロンシャンの横に松葉づえがあった。

 

「やぁ、マサムネ、また会えてうれしいよ!」

「約束を守ってくれたんだね」

「こちらへ来て座りたまえ」

ロンシャンは、そう言うと彼を手招きした。

 

「マサムネ、すまなかったな」

「あのあと、足を挫いてこのざまさ」

そう言うと、ギブスをした左足を投げ出した。

 

「キミの所へ行けなくて、連絡手段もなかったから困っていたんだよ」

「ボクの私的なことだから使いも出せなくてね」

「それをわざわざキミの方から来てくれた」

 

「キミはボクの一方的なワガママに付き合ってくれたんだね」

ロンシャンは申し訳なさそうに言った。

 

それを聞いた彼は慌て、右手を顔の前で左右に振りながら言った。

「そんなことはありませんよ」

「実はボクもあのあと、体が思うように動かなくて、絵が完成したのが今朝なんです」

「ロンシャンさんが何度も来てくれていたんじゃないかと思って、心苦しくて来ただけなんです」

「『もう、いらないよ』と言われても仕方ないと思ってます」

 

ロンシャンは言った。

「そうだったのか」

「それじゃあ、お互い貸し借りナシだな」

 

二人は顔を見合わせ、吹き出した。

 

「こんなことってあるんですね」

彼は、ロンシャンとの出会いは、やはり奇跡だと思った。

 

そして、ロンシャンは少し間をおき「では、絵を見せてくれないか?」と言った。

 

「わかりました」

彼はゆっくり包みをほどいた。

そして絵の後ろに回り、テーブルに立て「こちらになります」と言った。

 

大きな絵だった。

後ろに回り、両手で支える彼が見えない程だった。

「マサムネ、いったいこの絵は...」

ロンシャンは驚いた。

 

彼は言った。

「ロンシャンさん、すいません」

「どうしても描きたい風景があったので全部描き直しました」

「そうしたら、ロンシャンさんがほしいと言ってくれた絵より倍くらい大きな絵になってしまいました」

「いらなければ持って帰りますから安心して下さい」

 

彼は、ロンシャンに絵の後ろから話しかけていたが、なんの返事もなかった。

「ロンシャンさん?」

 

彼は不安が的中したと思った。

すると、先ほどの蝶ネクタイの男性が横に来て「持つのを代わります」と、言った。

彼は、代わってもらい絵の横に出て、恐る恐るロンシャンを見た。

  

 

今日のお話はここまでです。

あなたの日々がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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