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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」第七話「拍手(ウソ)」

こんにちは、チャバティ64です。

 

今日は新しい元号が発表されましたね。

「令和」

なんだか気分も一新されそうで新しい時代がやってきます。

「れいわ」「レーワ」とも言われそうです。

 

これを聞いたときボクは思いました。

今現在、世界各国で不安定な政情があとを絶ちません。

各国間で「冷話」とならないよう切に願いたいです。

エイプリルブラックジョークでありますように。

 

 

仕事はいい香りのするお茶の販売をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

ネットサーフィンのついでに、遊びに来てください。

  

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スピンオフな連続小説 

第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」

第七話「拍手(ウソ)」 

 

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)

 

行く道は涙に濡れ、

行く道は嘆きにあふれ、

行く道は悲しみの数だけ続く

・・・「DRIVER」

 

《本編》

 

「こちらを持てばよろしいですか?」

蝶ネクタイのスズキと名乗る男性は聞いた。

彼は頷き、持つのを代わってもらい絵の横に出た。

そして、恐る恐るロンシャンを見た。

 

ロンシャンは松葉杖をつき、立ち上がっていた。

下を向き、右手で目の辺りを押さえ黙っていた。

 

さらに、いま店にいる15人ほどの従業員がロンシャンの横に立ち半円を描くように絵を囲みこちらを見ていた。

そして、何人かが下を向き肩を震わせていた。

 

彼は緊張する中だったが、なぜか先ほどの女性だけが青いスカートを身につけていることを不思議に思った。

 

ロンシャンは顔を上げた。

目が真っ赤になっていた。

また下を向き、首を左右に振りながら言った。

 

「言葉にならない…」

「素晴らしいよ、マサムネ!!」

「最高だよ!!!」

 

ロンシャンが、そう言うと一斉に拍手が起こった。

 

店内が「さくらの花びらが風に舞うかのように」拍手と笑顔と涙で包まれた。

絵の中では「さくらの花びら」と共に「少女の青いスカート」が、美しく揺れていた。

 

そこは、まさに春だった! 

 

彼は嬉しかった。

こんなに多くの人から誉めてもらえるなんて、思いもしなかった。

「持ってきてよかった」と心から思った。

 

ロンシャンは彼に言った。

「この青いスカートの少女はバンビーノかい?」

 

「えっ!?」

 「…」

 

彼は驚いた。

「ロンシャンさん、どうしてその名前を...」

 

ロンシャンは言った。

「彼女から聞かされていたからさ」

「ボクにさくらの絵を飾ってほしいと持ってきた看護師」

「それがバンビーノだよ」

 

「だって、ロンシャンさん、持ってきたのは『色の黒いやせた金髪の妊婦』と言っていましたよね」

彼は言った。

 

「そうともマサムネ、彼女はその通りだったよ」

 

「ウソです、彼女は色が白くふくよかで...」

彼がそう言うと、ロンシャンは顔を振りながら言った。

 

「彼女には持病があったんだよ」

「昔から肝臓が悪くて、あまり昼間は外に出なかったはずだ」

「クスリの作用で日光に当たると肌が黒くなってしまうんだよ」

 

「キミともすれ違いが多かったんじゃないか?」

「彼女は暗いうちに出かけ、暗くなってから帰ってくるのが日課だったそうだ」

「もちろん看護師だから夜の当直もあるしね」

 

彼は、そう言われると心当たりがあった。

また、今になって置き手紙が多かった理由がわかった気がした。

 

「キミは絵に夢中で気付かなかったんだよ」

「とても大切なこともね...」

ロンシャンは口ごもった。

 

「えっ!?なんですか?」

「教えてください!」

彼はバンビーノの名を聞き、真剣だった。

 

ロンシャンは彼の目を見つめ言った。

「彼女には、キミとの子が、お腹にいたんだよ....」

 

 

 

「そんな.....」

彼は声にならないほど驚いた。

 

ロンシャンは続けた。

「つわりがひどく痩せてしまった彼女は、少しでもお腹の赤ちゃんのためにと、白い肌を犠牲にして日光を浴びたんだよ」

「その結果が黒くなった肌の色なんだ」

 

「その後、無事に出産して体調もよくなっていたが、去年亡くなってしまったんだ」

「持病が悪化してしまってね」

 

「本当に...残念だよ...」

 

ロンシャンは目を閉じ、少し沈黙した。

そして、涙がこぼれないよう天井を見上げ、声を絞り出した。

 

「太陽みたいに明るい子だった...」

 

ロンシャンのそばに立っている従業員も、うつむき肩を震わせ、うなずいていた。

 

「だからボクは、四方に手を尽くし、キミのことを探した」

「そして見つけたんだ」

「あのさくらの絵と同じ絵を描く君を、あの公園で」

「キミの名前を聞いたときは、本当にうれしかったよ」

 

彼は頭を抱え、無言でテーブルにうずくまっていた。

 

ロンシャンは静かに続けた。 

「彼女は、看護師のハードワークをあきらめ出産を選んだ」

「親が出産を認めてくれるはずもないと、悩んでいたんだ」

「だからボクは、彼女が自立できるように、キミとの思い出の場所でもあるボクの店で働いてもらっていたんだよ」

「ボクの店は、日が沈む夕方からの開店だからね」

 

「毎日出勤してくると、真っ先にさくらの絵を見て、嬉しそうに微笑んでいたよ」

「それからね、彼女は青いスカートをとても大切にしていて、いつも身につけていた」

「ボクの店は全員、白いドレスシャツに黒い衣装の組み合わせなんだが、彼女がチーフになった時、特別に青いスカートを仕立てたんだ」

 

「あまりにも似合っていたからね」

 

「彼女は、もともと看護師だからなのかわからないが、お客様の気持ちを先読みする素晴らしい接客をしてくれた」 

「それからは、フランスの店で『青いスカートを身につけた接客のカリスマ』として有名になり『料理じゃなく接客』で、ロンシャンの名を上げてくれたんだ!」

 

「ボクの店で勤務する子たちは、全員フランスで研修をするんだ」

「この子たちの仕事は、バンビーノが教えたものが多いんだよ」

 

「だから、ここにいるみんなは、キミの絵の中の少女がバンビーノだと、ひと目でわかった」

「絵の中に生まれ変わったバンビーノを見て、誰ともなく拍手が起き、涙があふれたんだ」

 

「ボクが彼女に対して知っていることは、これがすべてだよ」

 

「それからね…」

 

ひと呼吸置き、ロンシャンは目を閉じ言った。

 

「ボクはキミにウソをついた…」

 

 

今日のお話はここまでです。

あなたの日々がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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