スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」第十話「治恵須(harutosh!)」
こんにちは、チャバティ64です。
今日は兵庫、大阪を回っています。
朝は冷えましたが日中は暖かいですね。
温かい飲み物が好きなので少々複雑です(笑)
仕事はいい香りのするお茶の販売員をしています。
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さて、今日の小説はいよいよあのことに迫ります。
ミホは何を語るのか?
そして、彼から衝撃の一言が放たれる。
第十話お楽しみください。
(見頃はあと一週間ですかね)
スピンオフな連続小説
第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」
第十話「治恵須(harutosh!)」
(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙に濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く
・・・「DRIVER」
《本編》
「ミホさん、もっ、も、もう一つ聞いてもいいかな?」
ミホは質問内容がわかったようで、優しくうなずいた。
「その、あの、えっ~、ボクたちの子供ってロンシャンさんに聞いたけど...」
ミホは言った。
「はい」
「男の子で、先月10歳になりました」
「名前はハルトシと言います」
「名付け親は、もちろんバンビーノです」
「やっぱり、そうか...」
彼は、絵の裏にあったサインの名前を思い出していた。
バンビーノの横にあった「harutosh!」の文字だ。
「本当は最後の文字は「i」(アイ)だが「!」(感嘆符)にして「愛」を強調したんだ」
彼はすぐに理解し「バンビーノらしいステキなサインだ」と、思った。
ミホは続けた。
「バンビーノは、どうしても漢字の名をつけたかったんです」
「そして、私に教えて欲しいと相談して来ました」
「名前はすぐに決まりました」
「春が大好きだったバンビーノらしい名前です」
「あなたも喜んでくれると言っていました」
「そして漢字は、あなたの名前の治宗(マサムネ)から『治』の一文字を取りました」
「これは『ハル』と読めますね」
「それから私の恵歩(ミホ)の『恵』という字をつけると言い出し、困ったのですが最後には根負けしました」
「これは人名字では『ト』と読めます」
「そして最後の『シ』という字はなかなか決まらなくて悩んだあげく『須』という字が気に入りつけました。
部首の「さんづくり」が「さんずい」などと違って同じ方向を向き、三人で芝生の上を寝そべるような字だと喜んでいました。
ミホは嬉しそうに言った。
「ステキな名前だね、さすがバンビーノだ」
「ミホさんも本当にありがとう、バンビーノの喜ぶ顔が目に浮かんだよ」
そういうと彼は目を閉じた。
「ゴホ、ゴホッ」
少しセキが出始めた。
聞きたいことはまだまだあるが、ミホの気遣いで明日にすることになった。
翌日、ミホはロンシャンと一緒に病室を訪れた。
窓からはカーテン越しに、やわらかな光がさしていた。
「やぁ、マサムネ、調子はどうだい?」
「急に倒れるから驚いたよ」
「なにからなにまで老人を驚かせるなぁ」
「君も、バンビーノも!」
ロンシャンは、手に持っていた四角い包みを差し出した。
「ほら、マサムネ!」
「今の君にはクスリが必要だ」
「何よりも元気が出るぞ!」
そう言われ、彼は両手で受け取り包装をはがした。
すると中からあの絵が出てきた。
「ロンシャンさんこれは...」
ロンシャンは言った。
「昨日、日本で言う大工を呼んで作ってもらったんだ」
「うちの店を作ってくれた職人さんだよ」
「額から出したままじゃいけないと思ってね」
「マサムネ、キミは額に合わせてキャンバスを選び、絵を描いただろう?」
「これは違うんだ、絵に合わせて額を作ったんだ」
「裏側も見てくれよ」
彼は額を裏返した。
なんと!裏面の一部がガラス張りになっていた。
もちろんメッセージとサインの部分だった。
彼は裏面を凝視しながら涙ぐんだ。
「最高です、ロンシャンさん!」
「これじゃ、どっち向きに飾っていいのか分からないですね」
「本当にありがとうございます!」
ロンシャンは言った。
「マサムネ、ミホから色々聞いただろ?」
「バンビーノはキミとの出会いに感謝していた」
「後悔なんて、どこにもなかったんだ」
「これからもいい作品を描き続けてくれ」
「出来た絵は、私がすべて買うよ」
「上からサインはしないがね(笑)」
ロンシャンがサインを描く真似をして、おどけて見せた。
「ハッハッハッハ...」病室が笑いに包まれた。
「ちなみにマサムネ、私はキミが持ってきてくれたあの絵を、いくらで買えばいいんだい?」
「もう店に飾ってしまって返せないがね(笑)」
ロンシャンは両手を広げ、にやけた顔で首を振りながら言った。
彼は言った。
「もちろん差し上げます」
「本当に、お世話になってしまいました」
「ロンシャンさんが、ボクを探してくれなければ何もわからなかった」
「最後の置手紙も受け取ることが出来ませんでした」
「そのお礼になれば、うれしいです」
ロンシャンは言った。
「マサムネ、キミは知らないだろうが、あの絵を買おうとすれば500万フランはするんだ」
「タダで受け取るなんて出来ないよ」
「500万フラン?本当ですか?!」
彼は驚いた。
「そうなんですね、それはよかったです」
「バンビーノに褒めてもらえるなぁ」
「青いスカートも、カバンもクツも買ってあげられる」
そういうと嬉しそうに笑った。
そして彼は、明るくハッキリとした口調で言った。
「実はボク、もうすぐ死ぬんです」
今日のお話はここまでです。
あなたの今日がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。