連続小説ドライバー27 第三章「無題 ある絵描きの死」第九話
こんにちは、チャバティ64です。
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BASEの「お茶の愛葉園」(あいばえん)
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よろしくお願いします。
本日も連続小説の続きをお届けします。
ロンシャンは叫び、彼はうちふるえる。
「砕け散るガラス、割れてしまった額、飛び出した絵」
さあ、いよいよ大詰めです。
(「年をかさね、機械は朽ち果てるが、さくらは益々映える」
「あぁ、生きる力は素晴らしい!」)
連続小説ドライバー3 「無題(ある絵描きの死)」
昔話は本当の話の連続小説 第九話
(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙に濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く
・・・「DRIVER」
《本編》
「ボクはキミにウソをついた」
「実は、彼女が絵を持ってきたときに交わした約束は、二つあるんだ」
「一つ目は額から絵を出さないこと」
「二つ目はマサムネが現れたら絵を渡すことだったんだ」
「今日、キミがここへ来て、この絵を見た」
「だから、今日からこの絵のオーナーはキミだ!」
そう言うと、さっき無理を聞いてくれた女性が笑顔で涙を流しながら、大切に胸元に抱えていた。
彼女だけが青いスカートを身につけていた。
名前は「恵歩(ミホ)」と言い、普段はフランスの店にいるのだが、日本の店のオープンに伴って応援に来ていたのだった。
バンビーノが看護師になるもっと前からの親友で、出産にも立ち会い、ロンシャンが探していることを知って連絡を取ったのは彼女だった。
また、バンビーノが亡くなる前に青いスカートを託された人物でもあった。
その彼女が持つ絵を見た彼は、小さな声で振り絞るように言った。
「あぁ、ボクの絵だ」
「バンビーノに描いた、さくらの絵だ」
「あぁ、バンビーノごめんよ」
彼はイスから立ち上がり、その絵を両手で受けとると胸に抱きしめたまま、床にひざまづいた。
しかし、次の瞬間!
「よせ!マサムネ!!!」
ロンシャンの大きな声がとどろいた。
彼はあろうことか、ひとしきり震えたあと、おもむろに絵を振り上げ床に叩きつけた。
「グァシャッ」額が割れ、ガラスが飛び散った。
「こんな絵のために...」
「こんな絵のためにボクは...」
「一番大切なものを無くしてしまったんだ!」
彼はひざまずいたまま、叩きつけた絵を見ながら号泣した。
ロンシャンが近寄り、肩をそっと引き寄せた。
「マサムネ、そうじゃないだろ?」
「キミはバンビーノのことを忘れてしまったのかい?」
「彼女はキミのことが大好きだったんだ」
「その絵はバンビーノそのものなんだよ」
彼は額から飛び出てしまった絵を両手に持ち、胸に抱きしめ泣いた。
声にならない嗚咽が続き、悲しみが辺りを包んだ。
絵を抱き天井を見上げ泣く彼を見て、ロンシャンが何かを見つけた。
「マサムネ、それは?!」
彼は、ロンシャンの顔を見た。
「それだよマサムネ、絵の裏側になんて書いてある?」
ロンシャンは彼が持つ絵を指さした。
「額から出さない約束」が、あったため絵の裏側は誰も見たことがなかった。
しかし彼は、知っていた。
「ボクのサインです...初めて作品に描いた名前なんです...」
そう言いながら、絵をひっくりかえした。
彼は... 言葉を... 失った...
涙で目がかすみ読みにくかった。
それは絵の裏側に、たった4行だけ書いてあった。
まさしくそれは...
バンビーノからの「最後の置き手紙」だった...
ミュンヒル・ロータリーの絵は、すべてあなたが描いた絵よ!
やっぱり、私の信じていたことは正しかったわ!
正しかったのよ、マサムネ、愛してる!
私にステキな人生をくれて、ありがとう!
masamune.yosano vanveeno harutosi
それを見たロンシャンは驚きを隠せなかった。
「なんてことだ、ミュンヒルがマサムネだったなんて...」
マサムネは、ゆっくり立ち上がり、絵をテーブルに置いた。
「ボクが初めて作品に書いた自分の名前」
「その上にメッセージ、横に名前を書き足したんだね、バンビーノ」
「あぁ、わかったよ!」
「この絵はバンビーノとの共作になったんだね!」
「やはり、この絵は君自身だったんだ」
「こんなにしてしまって、ごめんよ、バンビーノ」
「ゴホッ、ゴホ、ゴホッ」
そう言うと、彼は咳き込みながらその場に倒れてしまった。
「いかん、救急車だ!」
「すぐに救急車を呼んでくれ!」
ロンシャンは叫んだ。
今日のお話はここまでです。
このお話は明日に続きます。
あなたの今日がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。