スピンオフな連続小説ドライバー? 第三章「無題(ある絵描きの死)」最終話「旅立ち(デッサン)」
こんにちは、チャバティ64です。
今日はかみさんと浜松城へさくら散策に出かけました。
ものすごい人がいて車が止められなくて大変でした。
日本人はさくらが好きですね。
家康公も花見を楽しまれたのでないでしょうか?
仕事はいい香りのするお茶の販売員をしています。
次はららぽーと海老名で催事販売です。
BASEの「お茶の愛葉園」(あいばえん)
というショップを趣味で運営しています。
本日で連続小説第三章完結です。
お楽しみ下さい。
(見納めです)
スピンオフな連続小説
第三章ドライバー?「無題(ある絵描きの死)」
最終話「旅立ち(デッサン)」
(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙に濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く
・・・「DRIVER」
《本編》
「しかし、退社はしてないですよ、鈴木さん」
「えっ、どういうことですか?」本多は聞いた。
「あれ、知りませんでしたか?」
「うちの葬儀社のTSって創業者の『タカフミ・スズキ』から取ったんですけど、鈴木さんのお父さんですよ」
「鈴木さんは社長のひとり息子で、いまでもTSの常務取締役です」
「そちらの仕事が忙しくて、経営会議ぐらいにしか顔はだされませんけどね」
本多は沈黙した。
「もともと、うちの社長は「ロンシャン」と言う有名フレンチの本店で修行して、日本に戻ってきてから創業したと聞いています」
「奥様が専務をされていて、名前は読みずらいのですが「めぐむに、あゆむ」と書いて恵歩(ミホ)さんといいます」
「75歳を過ぎてますが、いまでも現場に出て接客されることがあります」
「いつも青いスカートをお召しで、ステキな方ですよ」
「え~っ!?」
本多の声が車庫中に響いた。
「部長、ちなみに鈴木さんって、なんでうちにいるのかご存知ですか?」
本多は疑問をぶつけた。
大東は少し間を置き答えた。
「鈴木さんが25~6歳くらいの時に『修行に出る』と言い出したんです」
「社長は反対したんですが、専務がお許しになったそうです」
「どうせならと、当時、TSには搬送車がなかったので御社に行ったみたいですよ」
「最初は『すぐに戻ってくるだろう』と、たかをくくっていたようですが、そちらの居心地が良かったんでしょうね」
「すっかり、ライラックの鈴木さんになってしまいました(笑)」
「ちなみにこれは、うちの従業員も知りませんから内緒でお願いしますね」
大東は続けた。
「当時、私もハタチを回ったくらいでしたが、鈴木さんが最後の挨拶で言った言葉は今でも忘れられません」
「便宜上、皆の前で退社の挨拶をしたんです」
「もちろん当時は、本当に退社すると思っていました」
「そのとき鈴木さんは、こう言ったんです」
「自分の絵を描くために勉強してきます」
「意味はわかりませんでしたが、そう言ったんです」
本多は大東部長の話を聞き、もう何が何やら、わからなくなっていた。
ただ、もうひとつ確認したいことがあった。
「大東部長、もしかしてTSさんに、さくらの絵なんか飾ってありますか?」
大東が答えた。
「よくご存じですね」
「社長室にあるんですが『マサムネ・ヨサノ』の絵だと聞いています」
「私が入社した時にはすでに飾られていました」
「社長と専務の机の後ろにあるので、あまり近くで見たことはありませんが、絵画としては小さいものですね」
「柱につるして飾ってあるので、以前、風か何かで、絵が裏返ってしまっていたことがありました」
「私は、すぐにお伝えしたのですが、専務に『そのままでいいのよ』と言われました」
「それから、たしか鈴木さんが額から出して、両面コピーしてましたね」
「その時も、普通に素手でさわっていましたから『手袋しなくて大丈夫ですか?』と、聞いたら『えっ、どうして?』と言われたのを覚えています」
「それから、ほら、ほんの先日、ニュースで不運の名画家マサムネが暮らしていたと言われている、木造アパートの取り壊しの時に『名前のない絵のデッサン』が見つかって、鑑定したら本物だったってあったじゃないですか」
「ニュースで印象的だったのは、持ち主にあたる人が『信じていたことが正しかったことを証明する』と、なぜかフランスのオークションに出品して、たしか最後は3人で競って、日本円で8億円くらいで落札したと思います」
「うちにあるのは、それほどの画家の作品とは思えない扱いですからね」
「上手な絵描きさんの贋作か、コピーだと思いますよ」
「そちらに手土産で持って行ったと思いましたが、ありませんか?」
「え~っ!あります!」
「ホントの話ですか!!?」
「アパートって?」
本多は驚き疲れてしまった。
「すでに、お亡くなりになっているみたいですが、外国の方が、その一室をずっと借りていたそうですよ」
「お家賃を30年分ぐらい先払いされていたそうで、それが終わって取り壊したと言っていました」
「たまに、どなたかが掃除に来てたみたいですよ」
大東はニュースの内容を伝えた。
「だいたいわかりました」
「部長、長々と、ありがとうございました」
「電話があったことは、みんなに内緒でお願いします」
「変な人ですねぇ本多さん、わかりましたよ」
「でも今の話、御社の社長さんは、全部知っていますよ」
「それじゃまた、いつでも待ってますよ(笑)」
大東は、笑いながらそう言うと電話を切った。
(今日もいい日でありますように!)
「ガチャ」
車庫の扉が開く音がした。
本多が振り向くと、鈴木が慌てて入って来た。
「騒がしいな、本多」
「仕事が入った!出るからな」
「あっ、行ってらっしゃい」
「さっきのデッサン画、素敵でしたね」
本多は、にやけてしまった。
「なんだ、嬉しそうだな」
「いい絵だろ、毎日見てやってくれよ」
「それはそうと、なんかいいことでもあったのか?」
「はい、ありました」
「そうか、そりゃあ良かったな、気を付けて帰れよ」
「はい、ありがとうございます」
「鈴木さんも、お気をつけて」
「おぅ、ありがとよ!」
鈴木が手を振って車に乗り込んだ。
本多は、見送りながら思った。
「やっぱり……」
べらんめえ調なフランス人のハーフで、TSの御曹司。
そして悲運の画家「マサムネ・ヨサノ」の一人息子。
やっぱり信じられない!
おわり
今日のお話はここまでです。
あなたの日々がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。