独り言の多い連続小説ドライバー? 第二章「とある屋敷のフスマノムコウ」第五話「フィフスエレメント」
こんにちは、チャバティ64です。
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BASEの「お茶の愛葉園」(あいばえん)
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どうかたまに覗いてやって下さい。
よろしくお願いします。
本日も連続小説ドライバーシリーズ第二章をお届けいたします。
ひと段落付き「チームゴミ拾い」の五人目のメンバーとなった本多。
もう完全に仕事外の奉仕作業だが...…。
それでは、お楽しみ下さい。
(虹がわける空の色 ♪♪~)
独り言の多い連続小説ドライバー?
第二章「とある屋敷のフスマノムコウ」
第五話「フィフスエレメント」
(この物語はフィクションです、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙で濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く
・・・「DRIVER」
《本編》
「さて、もういっちょいきますか」
もう何度つぶやいたであろう。
本多は外から見られないように静かに玄関をしめ、廊下に上がった。
まず、ハバさんにお許しをもらって上着を脱ぐことにした。
ハバさんは、今まで着ていたことにむしろ驚いていた。
本多は子供達に袋をもらい、ゴミを入れ始めた。
「あ~あぁ、そんな白い手袋でゴミなんか掴んで大丈夫ですか?」
ハバさんは申し訳なさそうに言った。
「大丈夫です」本多は返した。
手術用のゴム手袋がインナーで入っている。
むしろ「軍手で作業していて大丈夫なのかな?」と思った。
作業を始めて、どれくらい経過したであろうか、外に車が止まったような感じがした。
「ギィッ、ギッ」「ガチャッ、ガチャン」「ダムン、ドムゥン」
やはり、なにかが来たようだ。
本多は玄関を開けた。
「えっ」
本多は目を疑った。
「大東ぶちょおうぅ~、鈴木さんまでぇ~」
二人がそこに立っていた。
「ちょうどそこで会ったんだよ、なぁ大東」
「ハイ、奇遇でしたね鈴木さん」
二人は白い手袋をはめ、青い袋を大量に持っていた。
もちろん、インナーも抜かりない。
朝焼けが逆光で、二人の姿に後光がさしているようだった。
本多はなんだかホッとして、涙が出そうになった。
「お二人とも業務は大丈夫なんですか?」
鈴木が言った。
「あぁ昼の奴ら(山葉と川崎)が来たからな、俺たちゃ今日のお役はごめんだ」
「私も同じですよ、本多さん」
大東も言った。
「さてと、本多だけにイイカッコさせらんねぇからな」
「俺たちもいっちょやるか?大東」
「そうですね、鈴木さん!久々にやりますかぁ」
そういうと二人は、ハバさんとホハバさん、子供達に挨拶をして作業に取り掛かった。
鈴木は上着を脱いだが、大東は脱がない。
「葬儀社さんのプライドだろう」本多は大東をますます尊敬した。
それにしても、鈴木さんと大東部長があんなに仲がいいとは知らなかった。
大人5人と子供2人がフル稼働で片付けはじめた。
夜中からずっと働いている「タフな子供達」には、ほとほと感心した。
子供たちは後から来た2人にも「すいません」を連発していた。
失礼ながら「押し出しの強い」ハバさんの息子さんたちとは思えない腰の低さだった。
それから作業は、バケツリレーのように迅速に流れていった。
驚くことに1時間たらずで、ゴミをすべて袋詰めして外に出せた。
完全な朝となり、外には「パッカー車 ※」が2台止まっていて、作業員4人がせっせとゴミ袋を放り込んでいた。
(※ パッカー車 清掃会社のゴミ収集運搬専用車両)
「朝早くから大変だなぁ、他所を回れないだろうなぁ」
本多は思った。
自分は夜中から作業していることをすっかり忘れていた。
みるみるゴミは車に飲み込まれ、空き地の青いオブジェ(ゴミ袋)は、すべて片付いた。
あとは、掃除機掛けや雑巾掛けだが、そこは家の人にまかせればいいだろう。
清掃会社の人が、本多に駆け寄り、伝票にサインを求められた。
よく見ると発注者が「山葉」の名前になっていた。
となりの鈴木がのぞき込み「出発前に山葉に頼んどいたんだよ」と言った。
それでタイミングよく清掃車が来ていたのか。
本多はこの時点で、やっと気付いた。
「実は私も電話しちゃって、清掃会社の方が現場が同じだって気付いてくれて助かりましたよ」そう言うと大東は笑った。
【この二人は、報告の電話だけでここまで先読みするのか】
本多は、経験の差を思い知った。
「やっぱりスゴイや」本多はつぶやいた。
サインを頼まれた伝票を見ると「36立米」と書いてある。
「これはどういう単位なんですか?」
サインする前に本多は聞いた。
「これは、回収したものの量なんですが、ペチャンコに圧縮して乗せて、大型トラック2台と、2トン車一台分くらいですね」
「圧縮しなかったら、かるく大型トラック5台以上になると思います」
清掃会社の担当者が言った。
「すごい量だな」本多はつぶやいた。
そのつぶやきが清掃会社の人に聞えたようで「そうでもないですよ、最近は自治体が監視しているから少なくなりましたが、以前は、お年寄りの一人暮らしなんかで、こんなケースも結構ありました」と言われ驚いた。
まだ朽ちた家具や壁土、割れたガラスなど出ていないだけ良かったと言っていた。
大東部長が鈴木さんに「久々にやりますかぁ?」と声をかけた理由が、わかった気がした。
本多は10年勤務しているが、初めての経験だった。
「おい、本多帰るか?俺たちもう挨拶してきたぞ!」
鈴木が言った。
「ハイ、それじゃボクも挨拶だけしてきます」
本多は走って玄関に行き、上着を着て襟を正し、丁寧にあいさつをした。
ハバさん、ホハバさん、子供達も丁寧に見送ってくれた。
本多は長い戦いを制し、帰途についた。
前には鈴木さん、後ろには大東部長が走っている。
なぜか、必要以上にバックミラーを見てしまう。
3台で走っていると不思議と、いい気分だった。
後の車が右折のウインカーを出す。
本多は窓から右手を少し出し、手を振った。
今日のお話はここまでです。
あなたの今日がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。