5分で読めるハロウィーン限定小説 初めはクスッと、最後にスッキリ!「祖母が悪魔になった夜」
こんにちは、チャバティ64です。
仕事に忙殺されていてブログもツイッターもなかなか見られません。
ありがたいですがちょっとサウナに行きたいです(笑)
さてハロウィーンなのでショートストーリー(半分フィクション)をお届けします。
早いもので今年で4年目になりました。
毎年恒例のリライト記事です。
こういう時に作り置きは助かる~(笑)
ストーリーは「バレンタイン」「母の日」など行事ごとに出てくる2人が中心です。
「ばぁば」のシュールさと、妄想&リアルな「孫」の葛藤が楽しい!
最後に「クスッ」としていただけたら嬉しいです。
(運転手さん、上野まで!)
ハロウィン限定短編小説
「祖母が悪魔になった夜」
登場人物 孫 女子21歳
ばぁば 女子85歳
とある年の8月の終わり、祖父が亡くなった。
田舎で祖母と二人暮らし、健康的に暮らしていたが歳にはかなわなかったようだ。
90歳での他界は大往生と言っていいと思う。
祖母は85歳、しばらく前にお亡くなりになった「樹木〇林さん」に少しだけ似ている。
どちらかといえば物静かな人で落ち込むかと思ったけど、そんなそぶりも見せず今も一人で暮らしている。
それから2ヵ月が過ぎた。
私は【寂しがっているだろう】と思い、お茶を飲みに立ち寄った時のことだ。
居間でのんびり二人でお茶を飲んでいると、渋谷に集まっていた「ハロウィンの仮装行列」をテレビニュースでやっていた。
皆で写真を取り合い【日本の行事とは思えない】というのが私の感想だった。
私は言った。
「東京の人はスゴイねぇ」
「でも、ばぁば、これは無いよねぇ」
祖母は言った。
「えっ、どうしてな?」
「あんたも若いんだからやったらええのに」
「20歳、若かったら行くけどな、TOKIO」
【ばぁば、どうしてTOKIO?】
祖母は、まんざらでもないようだった。
【それからばぁば、20若くても65歳だよ】
私は、ひとりツッコミを連発していた。
つづいて祖母が言った。
「来年行くかな、TOKIO」
【だから、なぜ?】
「冥土の土産にやっとくか?」
「ついでに、じいさんも驚かせてやろうかの」
「ばぁば、じぃじが腰抜かしたら逆だよ!」
私は【ココだ!】と会心のツッコミを放った。
「ハハハハハ」二人で大笑いした。
【よかった、ばぁば元気そうで】
私は少しだけ安心したのだが…
この時は、まだこれから起こる「あの出来事」を考えもしなかった。
翌年9月のお彼岸に、祖父のお墓参りに行った。
みんなでお参りを済ませ、祖母の家でお茶を飲んでいた時だ。
「あんた、衣装は頼んでええのか?」
祖母が言った。
「衣装って、なんの?」
「去年、言ったじゃろ、じいさん驚かすって」
「いくぞ!東京」
そう言うと、右腕を上に突き出した。
【そこはTOKIOって...】
「えっ、ばぁば、もしかして...?」
「マジで~」
私は年寄りをあなどっていた。
早速、衣装を作った。
私は服飾の専門学校出なので縫製は得意だ。
祖母は「冥土の土産」だけに「メイド服に羽が生えたもの」と笑えないリクエストをよこした。
出来上がりを試着したら「羽が小さいから飛べん」とか言われたけど「大きい羽じゃ電車も乗れない」と説得した。
最終的には「棺桶に入らない」ということで納得していた。
【ばぁば、そこは譲っちゃダメなとこだよ】
私はのど元まで出ていた。
リハーサルも兼ねてメイクもした。
白髪が肩甲骨まである祖母が、オカルトメイクに真っ黒なメイド(冥土)服は、ちょっとどころかリアルに怖い。
悪霊退散間違いなし!
これでは、味方の「ジャック・オー・ランタン」も、オレンジ色から青くなっちゃう。
祖父も裸足(足は無い?)で逃げ出すだろう。
当日、衣装や小物・メイク道具をバッグに詰め、新幹線に乗った。
品川からはJR山手線で渋谷へ行った。
「うそ~本当に来ちゃった!」
私たちは、人の多さに驚きながら、駅のトイレで着替えた。
祖母の「オカルトメイク」もバッチリ決まり、周りは「リアル老婆風」だと思っている。
本物さながら(本物だけど)の迫力に、若い子たちから写真を求められ、祖母もご満悦のようだった。
「ヒッヒッヒィ」なんて笑って見せる。
祖母は、いたずらっ子のように楽しんでいた。
しかし、田舎の一人暮らしがたたり、早い時間だが眠くなってしまったようだ。
ばぁばは、電池が切れたかのように急に元気が無くなった。
私は【少し早いけど帰ろう】と思った。
「ばぁば、もうすぐ終わるから帰ろ」
私の問いに残念そうだったけど「来年またこればいいか」と、つぶやいた。
【これは記憶しとかなきゃ】
トイレで着替え、メイクを落とし衣装をまたバッグに詰めた。
祖母が「スイカタワー(スカイツリー)だけ見て帰りたい」と言った。
【ばぁば、それどこの国にあるの】
真顔で言われ、下を向いて笑いをこらえた。
「うん、行こう!」
私は、すぐに電車を調べ行くことにした。
渋谷から東京メトロに乗ったが、ものすごく混んでいて座れなかった。
祖母は「眠くなるから座りたくない」と言ってくれたので安心した。
足下のバッグが邪魔で、イスの無い優先場所(ベビーカー寄せ)に、二人で手をつないで立っていた。
向かい側が優先席だった。
制服を来た学生さんが、足を広げ座っていた。
「耳は大丈夫?」と、心配してしまうほど、イヤホンから音漏れしていた。
次の駅でベビーカーを押した妊婦さんが乗車してきた。
だいぶ、お腹が目立ち、カラダが重そう。
私たちは、すぐに場所をあけ、ベビーカーを寄せてもらった。
向いの学生さん(彼)が、チラッとこちらを見た。
しかしすぐに彼は無視して目を閉じました。
「タヌキ寝入り」したのです。
薄目を開けているのを見逃さなかった私は【恥ずかしいんだろうなぁ】と思い、彼に声をかけました。
「あの~ぅ、席を譲っていただけませんか?」
すると彼は、目を開け耳に手を当てて『私に聞こえないアピール』をしてきました。
音楽ライブで観客をあおるときの「あのしぐさ」です。
私はイラっと来たのですが、祖母に両手で肩をつかまれ、後ろに下がらせられました。
祖母は私に言いました。
「ありゃハルク・〇ーガンじゃな」
【なにそれ、ばぁば?】
「それならこっちも、この超満員の観客に聞かないとなぁ!」
【ばぁば、何する気?】
祖母は悪い顔をしています。
まるで「さっきの悪魔が乗り移った」ように…
彼がまた目を閉じた瞬間に大きい声で言いました。
「ぼくちゃんは席を譲るのが、はずかちいんでちゅかぁ~、ちかたがない子でちゅね~」
それを聞き、まわりは(観客)は大爆笑です!
唯一、聞こえなていない彼は何が起こったのかわかりません。
あわててイヤホンを外しました。
そこで祖母は彼に言いました。
「あの妊婦さんに席を譲ってくれんかのぅ?」
彼は何も言わずに、スッと立ち上がり、その妊婦さんに席を譲ってくれました。
それから、祖母とスイカタワー(スカイツリー)を見て帰りました。
その時にはいつもの「やさしいばぁば」の顔に戻っていました。
忘れられない「ハッピーハロウィン」の一日です。
おしまい
今日のお話はここまでです。
あなたの日々がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。