母の日限定ショートストーリー【カーネーションと、ばぁばと、ママ】
こんにちは、チャバティ64です。
先日10日は「母の日」でした。
新茶が忙しくて投稿を忘れてました。
このショートストーリーは毎年恒例にしたいんです。
ちなみにボクは毎年実家にお花を贈ります。
おふくろ(81)には真っ赤なカーネーションの鉢植えを!
祖母(95)には紫のカーネーションの鉢植えを送ります。
両方送っとかないと、庭に植えたときケンカになりますからね(笑
仕事はいい香りのするお茶の販売員をしています。
BASEの「お茶の愛葉園」(あいばえん)
というショップを趣味で運営しています。
お茶でうがいはオススメです。
よろしくお願いします。
今日は母の日特別読み切りで、あの二人が帰ってきます。
(ご存じない方ばかりだと思います。ハロウィン・バレンタインデー限定ショートストーリーをお時間がございましたら、ご参照下さい)
どうぞ、お楽しみ下さい。
(地球上のお母さんに花束を!!!)
母の日限定ショートストーリー
「カーネーションと、ばぁばと、ママ」
(この物語はフィクションです、登場人物、団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
「よりによって、ママと....」
朝のあわただしい時、
「母と娘が、ちょっとしたはずみで口喧嘩」
よくある話
だけど...
明日は、一年で一度の特別な日...
【車の中のカーネーションがかわいそう】
なんとかしないとなぁ....
私は、相変わらず田舎で独り暮らしを満喫する祖母のところへ、たまにお茶を飲みに行っている。
「去年のハロウィン」「今年のバレンタインデー」祖母といると、驚かされることばかりだ。
年は85を過ぎたけど、連絡はいつもスマホでLINE。
かわいいスタンプもいっぱい持ってる。
とにかくハイパーな、ばぁばなのだ。
最近忙しくて、お彼岸にじぃじのお墓参りに行ったきりだから、めずらしくひと月以上あいちゃった。
今日、仕事帰りの夜に、祖母の家に寄ってみた。
この時期、ばぁばの家の広い庭は所狭しとカーネーションが咲いている。
久しぶりだけど、もう晩御飯食べたかなぁ~?
「ばぁばぁー、こーんばぁんはぁ~!」
【もちろん玄関開けっ放し】
「あれっ?」
【返事がない?】
「ばぁばぁ、いないの~?」
【そんなことはないはず】
私は勝手に上がっていた。
祖母は、台所に立って何かを切っていた。
「タンタンタンタンッ」
年季の入ったリズムが気持ちいい。
【また、イヤホンで何か聞いてるな?】
「もぉ、ばぁば何聞いてるの?」
私は後ろから、肩を叩いた。
そうしたら祖母は「ビクッ」として振り向いた。
振り向くと、なぜか涙を流していた。
【えっ】
「ばぁば、どうしたの?」
私は少し慌てた。
祖母は左手でイヤホンの片側を外し、それを右の人差し指でさした。
「AKGじゃ」
【ばぁば、それは聞いてないよ】
「なんだ、ま~た、あんたか」
「いきなり脅かすんじゃないよ」
「また心臓が止まっちゃうじゃろ?」
【前回はいつ止まったの?】
「ばぁば どうしたの?何かあったの?」
「なにがじゃ?」
「だって、涙が?」
「あぁこれか?玉ねぎを刻んでてな」
「いま終わったとこじゃ」
【紛らわしいよ】
ばぁばは、右袖で涙を拭いフライパンで玉ねぎを炒め始めた。
すぐに玉ねぎの香りがしてきた。
「鍋いっぱい作るのに、玉ねぎもいっぱいいるから刻んでたんじゃ」
「いつもはグーグルをしてからやるんじゃが、この間行ったスイミングスクールで忘れてきてしもうてなぁ」
【ばぁば、プールでするのはゴーグルだよね?】
「ばぁば、スイミングスクール通ってるの?」
「最近、通い出したんじゃ」
「グーグルで検索したら近場にあったでな」
【なんでグーグル押しなの?】
「水着はどうしたの?」
「水着は黒のハイレゾ対応じゃ!」
【それはイヤホンじゃないの?】
「アマゾンで注文したんじゃよ」
「南米から送られてくるでな、中身のわりに大きな箱に入っとったぞ」
【たしかに箱は大きいけど...南米じゃないと思うよ(笑)】
【あ~今日も一人突っ込みが止まらな~い!!!】
「ばぁば、何を作ってたのかな?」
「カレー?」私は言った。
「そうじゃ、毎年この日はカレーと決まっとるじゃろう?」
【なんで言い切れるの?】
「ばぁば、どうしてカレーなの?」
「そりゃぁ、食べたいからじゃろうな」
【そりゃごもっとも】
手際よく、あめ色になった玉ねぎを鍋に移し火にかける。
その後も何かを炒めはじめた。
「ちくわ」だ。
「ばぁば、それってちくわ?」
「そうじゃ、ちくわじゃ、肉がキライでなぁ」
【あれ?ばぁば肉大好きだったよね】
ばぁばは、軽く炒めたちくわを鍋に入れた。
「でも、これはこれでうまいんじゃ」
「出来上がったら、一緒に食べてけばええよ」
「うん、そうする!」
祖母は、鍋をかき混ぜながら、鼻歌を歌った。
「ふ~ん、ふ~ん、ふふ~ふふ、ふふふ~~ん」
【ばぁば、ゴキゲンね!】
「ばぁば、それなんの歌?」
「なんじゃ、わからんのか?」
「バック・トウ・ザ・フューチャーじゃ!」
【そういわれれば...】
そう言うと、弱火にしてカレー粉をとかし入れた。
【たくさん作って、夜中にお寺さんでも取りにくるのかなぁ?】
「さて、あとは煮込むだけじゃ」
「来るまで、お茶でも飲むかのぅ」
「あんたご飯は食べたのか?」
【いま食べてけって...】
「おやつでも出すか?」
【ばぁば、晩御飯前だよ】
お茶を淹れてくれた。
祖母がいれるお茶はとてもおいしい。
祖母と二人でしばらくお茶とお話を楽しんだ。
カレーの香りもたってきて、夜も八時を回り、少し遅い晩御飯となる時間だ。
突然、外で車が止まる音がした。
「フゥオ~ン、ギィ、ガチャン」
「ばぁば、誰か来たみたい」
「フォ、フォ、フォ~、来たな?」
【バルタンばぁば?】
施錠してない玄関が開いた。
「かあさん、遅くなってごめんね~」
手に大きな袋をさげていた。
「ママ!!!」
私は突然のことで驚いた。
「なに、あんたも来てたの?」
「カレーの匂いにつられたの?」
【子供かよ!カレーは知らなかったし】
[かあさんが連絡したの?」
「それより、電話がつながらないんだけど...」
ママは矢継ぎばやに言った。
「それがな、スイミングスクールで忘れてきてしもうてな『玉ねぎで涙が出ない方法』って、グーグルで検索できんで困っとったんじゃ」
【ホントにグーグルじゃん...】
【じゃあ、ゴーグルは持ってるんだ】
「そんなことはええわい」
「腹が減ったら食うんじゃ、出来とるぞ!」
ばぁばは、立ちあがった。
「ばぁば、このカレーって…」
「さっき言ったじゃろ『来るまでお茶でも飲むかって』」
「待っとったんじゃよ」
「あんたのママをな」
【たしかにママはお肉がキライ】
「こやつはなぁ、毎年この日にカレーを食いに来るんじゃ」
「なぁ!」
ばぁばは少し嬉しそうだった。
「なんたって、かあさんのカレーが世界一おいしい!」
「そのかわり、これあげるから」
袋から出したのは見事な胡蝶蘭の鉢植え5本立ちだった。
【よくそんなの袋に入ってたな?】
「よし!好きなだけ食べていけ」
ばぁばは花が大好きだった。
「高かったろう?」
ばぁばは少し心配した。
「そうでもないわよ、それにもう何回もあることじゃないし(笑)」
【ママ、その言い方はないよ】
「そうじゃのう、あと3回くらいかの(笑)」
【ばぁば、そこは怒るとこだよ】
二人のやり取りを見てると気兼ねが無いというか、通じ合ってるというか、少しだけうらやましく思える。
朝のママとのケンカだってそうだ。
私が毎年あげるカーネーションの鉢植えは、花がなくなると枯れてしまう。
マンションで庭がないから空いた鉢だけがベランダに積み重なっている。
「毎年、鉢をあげてるみたいだ」と私が言ったのが発端だった。
「あんた、ばかだねぇ」
ママのお返しがこれだったから始末が悪い。
私は、余計なことまで口走った。
三人で、ばぁば特製カレーを食べながら話をした。
【ウマい!なんだこのちくわだけのカレー(笑)】
(玉ねぎは溶けこんでなくなっていた)
ばぁばが私に食べながら言った。
「あんた、宿根草(しゅっこんそう)って知っとるか?」
「何それ、しらないよ?」
私は初めて聞く名前だった。
「あんたはバカじゃなぁ」
ばぁばにも言われた。
「花が散ると一度枯れるが、それは地上での話じゃ」
「根っこは生きてて、地面の中で冬を過ごしてまた春になると、また花がつくんじゃ」
「つまり毎年、花が咲くんじゃよ」
「しっかり根を張れば、どんどん大きく広く咲くようになる」
「ワシのとこの庭のようにな」
「この庭のカーネーションは、毎年あんたからもらう鉢植えを、花がなくなってからママが持ってきて自分で植えとるんじゃ」
「どうじゃ、庭一杯になった」
「立派に育ったぞ!」
「あんたみたいになぁ」
ばぁばは、そう言うとニカッと笑った。
【えっ、ママが言いたかったことは...】
「ママ~ごめんね~」
私は思わず抱きつきました。
「バカだねぇ」
ママも「ギュッ」としてくれました。
「ねぇママ、どうして母の日の一日前にカレーを食べるの?」
私は、ママが毎年ばぁばの家に来ていることを知りませんでした。
「そりゃそうだよ、家でチクワのカレー出されたらいやだろ?」
「このカレーは肉嫌いの私でも食べられるように、かあさんが一生懸命考えて作ってくれたんだよ」
「そんなありがたいものを、一年に一度食べるのは何ものにも代え難い贅沢だよ」
「かあさんの子で良かった!と思いながら、チクワを噛みしめるんだよ(笑)」
「それからね...」
「母の日は、あんたから心をもらう日だから出かけないんだよ」
「ママにしてくれたのはあんたなんだからね」
「あんたがいなかったら、私はママじゃないんだよ」
「わかるね?」
「うん!」
【ママ、ありがとう!】
そんなやり取りの中、ばぁばが言った。
「ほれ、食ったら帰れ!」
「残りはタッパーに入れといたぞ」
「ほら、土産じゃ!」
「また、来年来るんじゃぞ」
「ワシが生きとったらじゃがな、ヒィッ、ヒィッ、ㇶィ」
「かあさん、ありがとう!」
「また、植えに来るからね」
【ドキッ!今年もカーネーションの鉢植えって見透かされてる?】
ばぁばのおかげで、ママと仲直りも出来ました。
「ばぁば、ママ、だ~いすき!」
おしまい
今日のお話はここまでです。
あなたの日々がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。