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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

連続小説ドライバー35 第四章「土下座のムコウ」第三話

こんにちは、チャバティ64です。

仕事はお茶の販売をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

よろしくお願いします。

 

屈託のない笑顔で話す女性は故人の奥さんだった。

本多は我に返るが意に介さない奥さん。

その誘惑に負ける本多。

ムスメも登場で悲しみが加速する。

 

第三話スタートです。

 

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(夜の街は雪が積もったようです)

 

子供たちの将来を考える連続小説 

章ドライバー?「土下座のムコウ」第三話

 

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)

 

行く道は涙に濡れ、

行く道は嘆きにあふれ、

行く道は悲しみの数だけ続く

・・・「DRIVER」

 

《本編》

 

「そういえば、おもしろい話があってね」

「私が下の子を産んで入院しているとき、主人が息子たちとカレーを作ったらしいの」

「それで、最後に仕上げと言って隠し味のつもりで『みりん』を入れたらしいのよ」

 

「普通に作ればおいしく出来るのに、余分なことをやってすごい味になったって息子が言ってたわ」

 

「そのあと、インスタントラーメンに隠し味で『酢』を入れて子供達に怒られたとも言ってた」

「中華料理店で酢の入ったラーメンを食べておいしかったからマネしたんだって」

「おかしいでしょ」

 

「サンラータンですね、ボクも好きですよ」

「行きつけは吟林亭という店です」

「おいしいですよ」

本多は笑顔で話す女性につられ、自分も笑顔で返してしまった。

 

本多は我に返った。

「はっ、これは失礼いたしました」

「不謹慎にも雑談に興じてしまいました」

「まことに申し訳ありません」

「お許しください、おわび申し上げます」

 

奥さんは「キョトン」とした。

そして、やはり笑いながら言った。

 

「あなた何言ってるの?」

「もっとお話ししましょうよ」

「せっかく盛り上がってきたのに」

 

「逆に、ここでやめたら許さないわよ」

「あなたのおかげでいろんなことが思い出せたわ」

「さぁ、何を謝ってるの、続きを話すわよ」

 

半ば強引な奥さんに本多は困惑した。

しかし、話さなければいけなくなったのも事実だ。

 

「お許しいただけるのであればお話します」

「私も同じような経験があります」

「お料理の件です」

 

「私は、カレーにコーヒーを入れるとおいしくなると聞いて、コーヒー豆を煮込んだことがあります」

「苦くて食べられたものではありませんでした」

「家内から食材を無駄にしたと、ずいぶん怒られました」

 

奥さんは笑った。

「ハハハッ、そりゃそうよね」

「男の人って本当に変なことするわね」

「普通に作ればおいしく出来るのに」

 

「でもね、もっとおいしく作って家族に驚いて欲しかった」

「そういうことでしょ?」

 

「ハイ、その通りです」

本多は恥ずかしそうに言った。

 

「気持ちはわかるんだけどね」

「やっぱり、普通が一番よね」

 

「あっ、そこ左に曲がって、突き当りが家よ」

 

気付けば1時間半が経っていた。

結構な人数が、玄関先に集まっていた。

義理堅い農村地帯では、よくある光景だ。

 

「到着いたしました、ドアを開けますのでお待ちください」

本多は運転席から急いでサイドのドアを開けた。

 

奥さんが下りてきた。

「お疲れ様でございました、お足元にお気を付けください」

車から降りても表情は柔らかかった。

近隣の人に会釈しながら玄関に入っていった。

 

「さて、用意をしますか」

本多はジャケットの両襟を下に引っ張り、気合を入れた。

 

まず荷物を玄関に運び、故人を連れていくための準備をしていた。

バックドアを一度跳ね上げ、周りから見えないように、体を挟み込み、ドアを下までおろして確認していた。

すると、下のすき間に人影が見えた。

 

「ねぇ、お父さんはその緑色の中にいるの?」

本多は「ぎょっ」とした。

見るとオカッパ頭のカワイイ女の子がのぞいていた。

 

本多は、すかさずドアを上まで跳ね上げ、しゃがみこみ女の子に目線を合わせた。

「そうだよ、お父さんが病院から帰って来たんだよ」

「もう少し待っててね、いま用意するからね」

本多は出来る限りやさしい声で言った。

 

女の子はニッコリ笑い、無言で玄関へ走って行った。

 

本多はタンカを持つ人を集い、すぐに布団に誘導することが出来た。

布団に寝かせ、ドライアイスなど処置をして安置が完了した。

あとは枕元のお飾りをするのみとなった。

 

そこにさっきの女の子がやってきた。

自分の分の座布団を抱きかかえている。

座るところを探しているようだった。

本多は手招きをして隣に座るように即した。

女の子はニッコリ笑い、座布団を並べ座った。

 

モカちゃ~ん、ご飯食べたの~」

ふすまの奥から先ほどの奥さん(お母さん)の声が聞こえる。

 

「まぁ~だぁ~、もう少しお父さん見てるから」

女の子(モカちゃん)は答えた。

 

今日のお話はここまでです。

このお話は明日に続きます。

 

あなたの今日がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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