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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

ハロウィン限定小説 初めはクスッと、最後にスッキリ!「祖母が悪魔になった夜」

こんにちは、チャバティ64です。

 

 

ハロウインなのでショートストーリー(フィクション)をお届けします。

毎年恒例「バレンタイン」「母の日」など

行事ごとに出てくる「あの二人」が帰ってきます。

ばぁばのシュールさと、妄想&リアルな孫の葛藤が楽しい!

最後に「クスッ」としていただけたら嬉しいです。

 

仕事はお茶の販売をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

よろしくお願いします。

 

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(運転手さん、上野まで!)

 

 

ハロウィン限定短編小説

「祖母が悪魔になった夜」

 

登場人物 孫   女子21歳

     ばあば 女子85歳

 

とある年の8月の終わり、祖父が亡くなった。

田舎で祖母と二人暮らし、健康的に暮らしていたが歳にはかなわなかったようだ。

90歳での他界は大往生と言っていいと思う。

祖母は85歳、お亡くなりになった「樹木希林さん」に、少しだけ似ている。

どちらかといえば物静かな人で、落ち込むかと思ったけど、そんなそぶりも見せず、今も一人で暮らしている。

 

それから2ヵ月が過ぎた。

私は「寂しがっているだろう」と思い、お茶を飲みに立ち寄った時のことだ。

居間でのんびり二人でお茶を飲んでいると、渋谷に集まっていた「ハロウィンの仮装行列」をテレビニュースでやっていた。

皆で写真を取り合い「日本の行事とは思えない」というのが感想だった。

 

私は言った。

「東京の人はスゴイねぇ」

「でも、ばぁば、これは無いよねぇ」

 

祖母は言った。 

「えっ、どうしてな?」

「あんたも若いんだからやったらええのに」

「20歳、若かったら行くけどな、TOKIO

 

【ばぁば、どうしてTOKIO?】

 

祖母は、まんざらでもないようだった。

 

【ばぁば、20若くても65歳だよ】

 

私は、ひとりツッコミを連発した。

 

つづいて祖母が言った。

「来年行くかな、TOKIO

 

【だから、なぜ?】

 

「冥土の土産にやっとくか?」

「ついでに、じいさんも驚かせてやろうかの」

 

「ばぁば、じぃじが腰抜かしたら逆だよ!」

私は「ココだ!」と会心のツッコミを放った。

 

「ハハハハハ」二人で大笑いした。

 

【よかった、ばぁば元気そうで】

 

私は少しだけ安心したのだが…

この時は、まだこれから起こる「あの出来事」を考えもしなかった。

 

翌年9月のお彼岸に、祖父のお墓参りに行った。

みんなでお参りを済ませ、祖母の家でお茶を飲んでいた時だ。

 

「あんた、衣装は頼んでええのか?」

祖母が言った。

 

「衣装って、なんの?」

私は言った。

 

「去年、言ったじゃろ、じいさん驚かすって」

「いくぞ!東京」

そう言うと、右腕を上に突き出した。 

 

【そこはTOKIOって...】

 

「えっ、ばぁば、もしかして...?」 

「マジで~」

 

私は年寄りをあなどっていた。

 

早速、衣装を作った。

私は服飾の専門学校出なので縫製は得意だ。

祖母は「冥土の土産」だけに「メイド服に羽が生えたもの」と笑えないリクエストをよこした。

出来上がりを試着したら「羽が小さいから飛べん」とか言われたけど「大きい羽じゃ電車も乗れない」と説得した。

 

最終的には「棺桶に入らない」ということで納得していた。

 

【ばぁば、そこは譲っちゃダメなとこだよ】

私はのど元まで出ていた。

 

リハーサルも兼ねてメイクもした。

白髪が肩甲骨まである祖母が、オカルトメイクに真っ黒なメイド(冥土)服は、ちょっとどころかリアルに怖い。

 

悪霊退散間違いなし!

これでは、味方の「ジャック・オー・ランタン」も、オレンジ色から青くなっちゃう。

祖父も裸足(足は無い?)で逃げ出すだろう。

 

当日、衣装や小物・メイク道具をバッグに詰め、新幹線に乗った。

品川からはJR山手線で渋谷へ行った。

 

「うそ~本当に来ちゃった!」

 

私たちは、人の多さに驚きながら、駅のトイレで着替えた。

祖母の「オカルトメイク」もバッチリ決まり、周りは「リアル老婆風」だと思っている。

本物さながら(本物だけど)の迫力に、若い子たちから写真を求められ、祖母もご満悦のようだった。

 

「ヒッヒッヒィ」なんて笑って見せる。

祖母は、いたずらっ子のように楽しんでいた。

 

しかし、田舎の一人暮らしがたたり、早い時間だが眠くなってしまったようだ。

電池が切れたかのように急に元気が無くなった。

 

私は【少し早いけど帰ろう】と思った。

 

「ばぁば、もうすぐ終わるから帰ろ」

 

私の問いに祖母は残念そうだったけど「来年またこればいいか」と、つぶやいた。

 

【これは記憶しとかなきゃ】

 

トイレで着替え、メイクを落とし衣装をまたバッグに詰めた。

 

祖母が「スイカタワー(スカイツリー)だけ見て帰りたい」と言った。

 

【ばぁば、それどこの国にあるの】

 

真顔で言われ、下を向いて笑いをこらえた。

「うん、行こう!」

私は、すぐに電車を調べ行くことにした。

 

渋谷から東京メトロに乗ったが、混んでいて座れなかった。

祖母は「眠くなるから座りたくない」と言ってくれたので安心した。

足下のバッグが邪魔で、イスの無い優先場所(ベビーカー寄せ)に、二人で手をつないで立っていた。

 

向かい側が優先席だった。

制服を来た学生が、足を広げ座っていた。

「耳は大丈夫?」と、心配してしまうほど、イヤホンから音漏れしていた。

 

次の駅でベビーカーを押した妊婦さんが乗車してきた。

だいぶ、お腹が目立ち、カラダが重そう。

私たちは、すぐに場所をあけ、ベビーカーを寄せてもらった。

 

向いの学生(彼)が、チラッとこちらを見た。

私は「席を譲る瞬間が見れる!」とワクワクした。

しかし、彼は無視して目を閉じました。

「タヌキ寝入り」したのです。

 

薄目を開けているのを見逃さなかった私は「恥ずかしいんだろうなぁ」と思い、彼に声をかけました。

 

「あの~ぅ、席を譲っていただけませんか?」

 

そうしたら、彼は目を開け耳に手を当てて「私に聞こえないアピール」をしてきました。

コンサートで観客をあおるときの「あのしぐさ」です。

私はイラっと来たのですが、祖母に両手で肩をつかまれ、後ろに下がらせられました。

 

祖母は私に言いました。

「ありゃハルク・ホーガンじゃな」

 

【誰それ、ばぁば?】

 

「それならこっちも、この超満員の観客に聞かないとな」

 

【ばぁば、何する気?】

 

祖母は悪い顔をしています。

まるで「さっきの悪魔が乗り移った」ように…。

 

彼がまた目を閉じた瞬間に大きい声で言いました。

 

「ぼくちゃんは席を譲るのが、はずかちいんでちゅかぁ~、ちかたがない子でちゅね~」

 

それを聞き、まわりは(観客)は大爆笑です!

 

唯一、聞こえなていない彼は何が起こったのかわかりません。

あわててイヤホンを外しました。

 

そこで祖母は彼に言いました。

「あの妊婦さんに席を譲ってくれんかのぅ?」

 

彼は何も言わずに、スッと立ち上がり、その妊婦さんに席を譲ってくれました。

 

それから、祖母とスイカタワー(スカイツリー)を見て帰りました。

その時にはいつもの「やさしいばぁば」の顔に戻っていました。

 

忘れられない「ハッピーハロウィン」の一日です。

 

おしまい

 

 

今日のお話はここまでです。

あなたの日々がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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