目がかすむ連続小説ドライバー? 第一章「昨日の夜」第三話「宗一君」
こんにちは、チャバティ64です。
やっと風邪が治ってきました。
みなさんもお気を付けください。
仕事はお茶の販売をしています。
BASEの「お茶の愛葉園」(あいばえん)
というショップを趣味で運営しています。
よろしくお願いします。
今日も、連続小説ドライバー?第三話をお送りします。
「搬送」という仕事は、故人を病院からご自宅や、葬儀社さんへ送り届けるお仕事です。
まさしく「おくりびと」ですね。
さて、今回はどのようなケースなのでしょうか?
お楽しみ下さい。
目がかすむ連続小説 ドライバー?第一章「昨日の夜」第三話「宗一君」
(この物語はフィクションです、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙で濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く、
・・・「DRIVER」
《本編》
「スクランブル発進!!!」
さすがに夜は道路がすいていて予定より5分早く病院に着いた。
車を所定の位置に止めると、後部ハッチを開き「タンカ付きのストレッチャー」と呼ばれる台車を下ろした。
二人は、人気のない裏口の通路から急いでRS病棟に向かった。
病院内は暗いながらも、手慣れたもので、すぐに病室に着いた。
入り口前で、お互いの着衣と髪型を確認した。
【コン、コン】
「失礼いたします」
「ライラック特殊搬送です。ヨシハラヒデキ様のお迎えに上がりました」
二人は深々とお辞儀し、ご遺族、看護師さんに挨拶をした。
それから、故人を病室のベッドからストレッチャーのタンカに手際よく移動した。
やはり背が高く、若いからかすごく重い、川崎は「本多さんがいてくれて助かった」と思っていた。
棺用の細い布団に寝かせ、顔あて(白い布)をしてからグリーンの綿布で包み込んだ。
準備が整い本多が言った。
「それでは、お車の方にお連れいたしますが、どちら様かご一緒に、ご乗車されますでしょうか?」
奥様らしき方が言った。
「一緒に乗っていかないとダメですか?」
それに答えるように本多は返した。
「ダメということはありません」
「お乗りにならなくても結構ですが、ご自宅までの道順もありますので、お車でお越しでしたら、お手数ですが先導していただけると大変助かります」
その時だった。
「ボク、一緒に乗ってくよ」
高校の制服を着た、ご子息らしき青年が言った。
【このブレザーは、たしか県下で一番の進学校だな】
本多は思った。
「頼んでいいのね宗一、弁二が待ってるから」
「先に帰ってお父さんのお布団ひいてるわね」
奥様(確定)が言った。
「いいよ、お父さんと一緒に帰るから」
「ボクが道案内するから、心配しないでいいよ」
ご子息(確定 以下、宗一君)が言った。
「では、私は車ですので、よろしくお願いします」
会釈もそこそこに奥様は廊下を走っていった。
残された宗一君は、こちらに向かいニコリと笑い会釈した。
本多と川崎もすかさず会釈をかえした。
【たいしたもんだ、気丈で立派な子だなぁ】
やりとりを聞いていた本多は、とても感心すると共に、素晴らしい子育てをしたお父様も『さぞ、心残りだろう』と思った。
病室を出て、看護師さんを先頭に少々暗い廊下を進んだ。
車の止めてある裏口から出て、本多は故人を乗せたストレッチャーを車両に格納し、揺れないように金具で固定した。
川崎は宗一君をサイドドアへ誘導し、乗車してもらった。
車両後部には、すでにお見送りの医師と看護師が数名到着し見守っていた。
本多はバックドアを静かに閉め、一歩下がり、川崎と横並びで車の中の故人に向かって深々と頭を下げた。
それから一瞬だけ間をおいて、くるりと180度振り返り本多は言った。
「これよりヨシハラ様をご自宅までご丁重にお送りいたします」
看護師の方に視線を向けながら「お手伝いいただき、ありがとうございました」
次に医師に目を向け「失礼いたします」
そう告げると、二人そろって深々とお辞儀をした。
二人は車両に乗り込み、運転席の川崎は言った
「ヨシハラ様、シートベルトをお願いいたします」
宗一君は、あわててシートベルトを締めた。
「それでは、32,455km・22時15分ヨシハラ様のご自宅に向け出発いたします」
「よろしくお願いします」宗一君が言った。
今日のお話はここまでです。
あなたの日々がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。