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〇〇〇?そいつに自由はあるのかい?

連続小説ドライバー33 第四章「土下座のムコウ」第一話

 

こんにちは、チャバティ64です。

仕事はお茶の販売をしています。

BASEの「お茶の葉園」(あいばえん)

というショップを趣味で運営しています。

よろしくお願いします。

 

今日から連続小説ドライバー第四章をお送りします。

日常に起こる生と死を見つめるドライバー。

「時に考えさせられ」

「時に胸が苦しくなり」

「時に腹が立ち」

「時に涙があふれる」

そんな物語、第四章です。

 

「生きていればいいことあるよ」

亡くなった人は、そういうかも知れませんね。

それでは、お楽しみ下さい。

 

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(ボカシなし!イイ感じに逆光です)

 

 

子供たちの将来を考える連続小説 

章ドライバー?「土下座のムコウ」第一話

 

(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)

 

行く道は涙に濡れ、

行く道は嘆きにあふれ、

行く道は悲しみの数だけ続く

・・・「DRIVER」

 

《本編》

 

それは、めずらしく少し肌寒い4月の昼頃のことだった。

 

「市立TT病院からご自宅まで搬送をお願いします」

「名前は片倉 昌和 様、宗派はわかりません」

「お家の方がいますので詳しくは現地で聞いてください」

 

事務員の山葉が受けた依頼はこんな感じだった。

情報は少ないが、いたって普通の業務のはずだった。

 

少し離れた郊外の、小高い丘の上にあるTT病院は、とてもキレイな病院だった。

本多は車を所定の位置に止め、ストレッチャーを引っ張り指定の病室へ向かった。

 

「ナースステーション前で、軽く会釈し病室を確認した」

 

「コン...コン」

「失礼いたします」

 

「お待たせいたしました、ライラック特殊送迎です」

「片倉 昌和 様のお迎えに上がりました」

本多は深々と頭を下げた。

 

病室は個室で、カーテンが引かれていて、返事がないため「そっと」覗いてみた。

 

小声で「失礼いたします」と言った。

カーテンの奥には故人以外、誰もいなかった。

 

【あれ、誰もいない?】

 

本多は部屋を出て、ナースステーションに行きたかったが、病院内を黒いネクタイをした人がウロウロするのは好ましくないため、部屋の入り口付近で待機した。

 

【さっき会釈したとき何人か目が合ったからもうすぐ来るかな?】

本多はそう思っていた。

 

すると、一人の女性が入ってきた。

歳の頃なら40前後と言ったところか。

 

「すいまっせ~ん、お手洗いに行ってましたぁ」

ニコニコしながら本多に言った。

なんとも現場に似合わない、ノリの明るい女性である。

 

本多はすかさず言った。

 

ライラック特殊送迎です、お待たせいたしました」

「片倉 昌和 様のお迎えに上がりました」

 

女性は答えた。

「あら、ありがとう、早かったのね」

「それじゃ看護師さんを呼んでくるわね」

「ちょっと待ってて」

 

「かしこまりました」

本多は女性が聞える範囲の小声で言った。

 

女性が病室を出ようとしたとき、ちょうど看護師がバタバタと2名入ってきて本多に言った。

「お待たせしました、それじゃタンカに移しますか?」

 

「ハイ、お願いします」

本多は答えた。

 

故人が男性で、背が高かったため、3人がかりで移すことにした。

看護師が頭と足に分かれ、本多が重たい胴体を持った。

 

頭側の看護師は、小さい声で言った。

 

「それじゃ、移しますよ」

「せーの、それ!」

無事タンカに移し替えが出来た。

 

頭を支えていた看護師が言った。

「おじいちゃんゴメンね『顔あて』が落ちちゃった」

 

「顔あて」とは、遺体の顔にかける白いハンカチくらいの布のことである。

 

「こちらをお使い下さい」

 

本多はすかさず、内ポケットに温めて置いた顔あての封を破り看護師に広げて渡した。

特に女性は口紅(故人のお化粧)などで色がつくため、本多は常に内ポケット左右に顔あてを持っている。

 

冷たい布を顔に乗せられるのはイヤだろうと、胸のポケットに入れ温めているのは本多の故人に対するやさしさだ。

 

「ありがとう、ごめんなさい」

看護師は恐縮して受け取った。

そして個人の顔にそっとあてた。

 

一瞬、故人の顔が見えたが、60歳後半くらいか?

髪も真っ白で薄く、顔色もとても悪かった。

 

【こりゃ、丸正さんの出番だな】

本多は思った。

(丸正さん 湯かん屋さん 納棺師 ドライバー1.2参照)

 

本多はその上から緑色の綿布をやさしくかけ、故人をくるんだ。

その姿を先ほどの女性がジッと見ていた。

本多は、このおじいさんの義理の娘(息子の嫁)か、何かかと思っていた。

 

「それではお待たせいたしました」

「ご自宅までご案内をお願いできますでしょうか?」

本多は確認した。

 

「ええ、もちろんです」

「一緒に乗せていって下さいね」

女性は笑顔で答えてくれた。

 

今日のお話はここまでです。

このお話は明日に続きます。

 

あなたの今日がステキな一日でありますように!

チャバティ64でした。

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