連続小説ドライバー20 第三章「無題 ある絵描きの死」第二話
こんにちは、チャバティ64です。
仕事はお茶の販売をしています。
BASEの「お茶の愛葉園」(あいばえん)
というショップを趣味で運営しています。
よろしくお願いします。
さて、本日も連続小説ドライバーシリーズ第三章をお送りします。
この物語はボクのドライバーシリーズに大好きな「amazarashi」の「無題」というタイトルの歌を題材とした「尊敬と愛が感じられるオマージュ」として受け入れていただけたら嬉しいです。
(あなたにとっての桜ソングってなんですか?)
連続小説ドライバー3 「無題(ある画家の死)」
昔話は本当の話の連続小説 第二話
(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙に濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く
・・・「DRIVER」
《本編》
「オレは、あいつのことを弟みたいに思っててなぁ、昔から名前で呼んでるんだ」
「まぁ、みんな知ってると思うけど、あいつは元々TSにいたんだよ」
(TS=TS葬儀社 9/11~「とある屋敷のフスマノムコウ」参照のこと)
「え~っ、鈴木さんってTSさんにいたんですか?」
みな一様に知らなかった。
「知らなかったか?」
「あいつ、ホントに自分のこと言わないからなぁ...」
社長は少し遠くを見ながら話し始めた。
「あいつが来たのは、25年くらい前の冬だったな」
「まだ20代だったよ、すごく暗い奴でな」
「ホントに無口で、つかみどころのないやつだったよ」
「それでな、ある日、小さな額に入った『さくらの絵』を一枚もって来たんだ...」
「事務所に飾ってほしいって」
「ほらそこにかけてあるだろ、それだよ」
「その絵には少し思い出があるんだよ……」
それはまだ「東京オリンピック」が、終わったばかりのころ、フランスにある小さな木造の借家で「夢中で絵を描いている」日本人の絵描きがいた。
その絵描き(彼)は「絵を描くことが大好き」だった。
理由はよくある話で、小さい頃に描いた絵が上手だと褒められた記憶が鮮明にあるからだ。
いまも、誰かに褒められたくて描いていることは自分でも気付いている。
しかし、褒めてくれるのは一緒に暮らしている彼女だけだった。
彼女の名は「バンビーノ」少しふっくらした金髪で色白のフランス人だ。
彼が、フランスに留学したばかりの頃、デッサンの勉強中に知り合った女性だった。
日本語を勉強していて、とても会話が上手だ。
仕事は看護師で、厳格な家庭で育ち、家族には病院の看護師寮に住んでいることになっている。
彼は、太陽のように明るく笑う彼女が大好きだった。
いつも一緒にいられるわけではないが、彼女はいつも彼に置手紙を書いてくれた。
その手紙は必ず、日本の「さくら」をイメージさせる花模様の便せんに書かれていた。
彼女の心のこもった、その手紙を読むたび彼は、いとおしい気持ちになった。
彼は、その気持ちをキャンバスにぶつけた。
激しいほどの愛情を精一杯ぶつけた。
朝も夜も寝食も忘れて夢中になった。
そして季節も忘れたころ、一枚の絵が描けた。
それは「さくらの花びらが風に舞う風景」だった。
「やぁ、ステキな絵だね!」
窓から声をかけたのは近くに住む「ミュンヒル」だった。
ミュンヒルは、画廊をやっていて、いつも絵を買ってもらっている。
「やぁ、ミュンヒル、久しぶりにいい絵が描けたと思うんだ」
「奮発してくれないか?」
「バンビーノと、最近出来た人気のレストランに行きたいんだ」
「出来れば、青いスカートもプレゼントしたいんだよ」
彼は言った。
ミュンヒルは下を向き、上を向き、言った。
「わかったよ、1500フランでどうだ?」
「そんなに?! いいのかい?」
「ああ、いいとも親友の頼みだ!」
「ありがとう、ミュンヒル!」
「いつものようにサインは入れなくていいね」
「ああ、そうしてくれ」
「じゃあ、明日引き取りに来るよ」
「しっかり仕上げておいてくれよ」
「わかったよ、ミュンヒルありがとう!」
今日のお話はここまでです。
このお話は明日に続きます。
あなたの今日がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。