連続小説 ドライバー18 第二章「とある屋敷のフスマノムコウ」最終話
こんにちは、家名 希子です。
「同情するならお金をちょうだい!」
「くれ」なんて言えない。
チャバティ64です。
ボクも欲しいです。
仕事はお茶の販売をしています。
BASEの「お茶の愛葉園」(あいばえん)
というショップを趣味で運営しています。
よろしくお願いします。
さて、連続小説 ドライバー?最終話です。
お茶でも飲みながらお楽しみいただけましたでしょうか?
(ピンクもいた~!)
ドライバー?シリーズ第二章
独り言の多い連続小説 最終話
「とある屋敷のフスマノムコウ」
(この物語はフィクションです、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません)
行く道は涙で濡れ、
行く道は嘆きにあふれ、
行く道は悲しみの数だけ続く
・・・「DRIVER」
《本編》
「いえ、私こそ大変失礼いたしました」
本多は、さしさわりの無い答えをした。
「あれ、式は大丈夫なんですか?」
本多は慌てて聞いた。
ハバさんは落ち着いた感じで答えた。
「会葬者が少ないからさっき終わりました」
「出棺までしばらく時間があるそうで休憩中です」
「そうなんですね」
通常は式終了と共に霊柩車にご遺体を乗せ、皆で見送りながら出棺するのが普通である。
珍しいこともあるもんだと本多は思った。
「山口様、もしお許しいただけるなら、故人に手を合わせたいのですがよろしいですか?」
「ぜひ、お願いします」
ハバさんはそう言い、一緒に会場に入った。
「うわっ、スゴイ!見事な花祭壇だ!」
本多はその祭壇に圧倒された。
まるで、遺影がお花畑の中で微笑んでいるようだった。
「私たちもこれが終わったらすぐに東京に帰ります」
「3年ぶりに子供達を父に見せようとして帰省したらあの状態でした」
「姉が父の面倒を見るという約束で、家も財産もすべて渡したのですが、そのお金で別の所に住んでいたようで、あのようなお恥ずかしい有様となっていて私を驚きました」
「母は早くになくなり、父はたった一人の肉親なのに… 姉妹でもわからないものです」
ハバさんは祭壇の前で悲しそうに言った。
本多はしっかり手を合わせたのち、失礼にならないように会場からロビーに出た。
「そういうことだったんだ」
本多はハバさんを誤解していたようだ。
「そうか、ハバさんが山口さんで喪主を務めたんだ」
「田中さんならすぐに分かったのにな」
本多はやっとすべてを理解した。
ハバさんんは言った。
「父も持病があって苦しかったと思います」
「警察の立ち合いも私がしたので現場を見て本当にそう思いました」
「それを本多さんにお世話になって、あんなに短時間で安らかな寝顔にしてもらって父も喜んだと思います」
「こちらの式場に来たら、本多さんにお礼が言えるかと思ったら別の会社の方だと聞いたので、大東さんに無理言って呼んでいただいたんです」
ハバさんは目に涙を浮かべ、こぼれ落ちるのをこらえていた。
「とんでもない、出来ることをさせていただいただけです」
「私どもにとって、故人が一番大切なお客様なのです」
「お客様に喜んでいただくのはどの仕事でも同じですが、私どもの仕事は直接お褒めいただくことはありません」
「それだけに、精一杯のご奉仕が出来たか?と、常に自問自答しています」
「自分に嘘はつけないように、大切なお客様に対し手を抜くようなことも出来ません」
本多は少し熱くなった。
「ありがとうございます」
ハバさんは目を閉じながらお礼を言った。
「私は東京で旅館の女将をしております」
「主人が大学の教授で、勤めていた旅館に泊りに来た縁で結婚し、その旅館も跡取りのいない先代から譲り受けました」
「子供達も普段は見習いをさせ、日々厳しく修行させています」
「今回のことでイヤな思いもしましたが、二人とも音を上げず最後までしっかりしていて本当に頼もしかったです」
「でも...」
「それを父に見てもらえなかったのが心残りです」
「なんであんなことに...虫の知らせですかね」
本多は言った。
「山口様、少し私の気持ちをお伝えしてよろしいですか?」
ハバさんはうなずいた。
「お父様はふすまの向こうでご覧になっていらっしゃったと思うんです」
「お布団にお休みになられてからの安らかなお顔は、私どもに何かができるわけではありません」
「やはり、お父様がお孫さんをご覧になって微笑まれていたんではないでしょうか?」
「私にはそう思えてしかたがありません」
ハバさん(山口様)は頭を下げた。
「ありがとうございます」
「どうしても父の無念が引っかかっていましたが、そう言って頂けて本当にうれしいです」
「お会いできてよかった」
「本多さん本当にお世話になりました」
「よかったら、ぜひ泊りに来てください」
そういうとハバさんは名刺をくれた。
そして、こらえきれなかった涙を拭い、会場へ戻って行った。
名刺に目をやると、そこには最近ミシュリンでスターを獲得した高級割烹旅館の名前が書いてあった。
「こりゃ泊りに行けないな」半笑いでつぶやいた。
本多は、人の気配を感じ振り向こうとしたら左横に大東が立っていた。
「本多さん、この名刺の旅館、来週の友前、友(友引前日、友引)で3名予約しました」
「鈴木さんを誘って行きましょう!経費はTSで持たせてもらいますから大丈夫ですよ」
「先日のお疲れさま会です、たまにはそんなのもいいでしょ?」
「私どもにとっても山口様は大切なお客様ですから」
「しかし、安らかなお顔になりましたね」
「あれは丸正さんの故人の口角を上げる技ですね」
「どこで学んだんですか?」
大東にはすべてお見通しだった。
「いや、いつもそばで見させてもらってますから自然と覚えました」
「クビになったら丸正さんにひろってもらわないと」
本多は笑いながら言った。
「クビになったらぜひ、TSに来て下さい」
「別にクビじゃなくてもいいですよ、待ってます」
「しかし、故人が一番のお客様とは、名言でしたね」
「うちの朝礼でも使わせてもらいますよ」
大東はそう言うと、右手で本多の左肩を「ポン」と叩いた。
本多は顔から火が出るほど恥ずかしかった。
しかし、この仕事がますます好きになった。
「次も頑張るぞ」
本多は独り言をつぶやいた。
「えっ?何か言いましたか」
大東は聞いた。
「なんでもありません」
本多はまた顔から火が出そうだった。
「最近独り言が増えたのかなぁ?」
と、つぶやく本多であった。
おわり
いかがでしたか?
ドライバー第二章です。
行く道の数だけドラマがあります。
また、近日中に第三章をお届けします。
しかし、漫画とか書けたらもっと伝わるんだろうなぁと思います。
誰か書いてくれないかなぁ。
あなたの今日がステキな一日でありますように!
チャバティ64でした。